「斬新な手法に釘付けになる」クローバーフィールド HAKAISHA シンコさんの映画レビュー(感想・評価)
斬新な手法に釘付けになる
“あれ”の攻撃を受けて逃げ回る人物たちを、ホームビデオが撮り続けます。
画面は右往左往し、手振れで激しく揺れるし、時にはあらぬものが映されたり、カメラを落としたりします。
それによって観客は、自分が事件の真っ只中にいるかのような臨場感に包まれるのです。
“あれ”はなかなかカメラのフレームに納まらず、その姿も定かになりません。
終盤になってやっと全体が捉えられますが、じっくり映されることはなく、何なのかよく把握できない状況です。
最後はカメラマンもやられてしまい、その先どうなったのか、“あれ”の正体も分からないまま映画は終わります。
続編の制作が決まっているそうです。
ビデオカメラだけの映像は否応なく緊迫感を煽りますが、映画作品としては極めて多くの制約を受けます。
アングルは全て一個人の目線です。
俯瞰やロング,切り返しもなく、エイゼンシュタインのモンタージュ理論は通用しません。
構成も、カメラマンの移動に合わせて、直線的な時間が進むだけです。
また、素人が撮っている映像らしく見せるために、スタッフは普段以上の難しいテクニックを求められました。
一流の腕を持つプロのカメラマンにはできないことなのです。
そこでカメラマン役の俳優に、実際にカメラを持たせて撮ったシーンが沢山あるそうです。
そして一切が偶然のショット、パニックの中の“取り損ない”であるように見せるために、撮影には周到な計画が立てられなければなりませんでした。
また、CG映像とホームビデオの組み合わせは、困難を極めたということです。
激しく揺れたり振れたりするビデオのフレームに、CG画像をひとつずつ手作業で組み合わせていかなければならなかったといいます。
息つく間もなく、型破りの映画は駆け抜けていきました。