クローバーフィールド HAKAISHA : インタビュー
これまでで、本作に関わる様々な話題がどのように広がっていったかをまとめたが、断片的な情報を上手くコントロールし、観客の好奇心をあおるという新しいプロモーション手法で本作を成功に導いた、話題の仕掛け人であるプロデューサーのJ・J・エイブラムスを直撃。その真意を尋ねた。(取材・文:小西未来)
J・J・エイブラムス インタビュー
「ネタバレされるほど注目されるほうが、よっぽど幸運なことだよ」
――「クローバーフィールド」には、プロデューサーとしての参加となりますが、具体的にはどの程度関わっていたのでしょうか?
「物語の着想からキャスティング、編集、サウンドミキシングに至るまで、すべての過程に関わっている。ただ、撮影のときだけは、あまり現場に行かれなかった。新番組のパイロット版の撮影とスケジュールが重なってしまったんでね。それでもラッシュ映像は毎日確認していたし、マット(・リーブス監督)に助言もしていたよ」
――「クローバーフィールド」で展開した宣伝戦術は見事でしたが、こうしたテクニックは、「LOST」や「エイリアス」などのTVシリーズを宣伝していくうえで培ったものなのでしょうか?
「TVドラマを手がけて、インターネットを通じて視聴者と“対話する”ことの重要さは認識していたつもりだ。でも、『クローバーフィールド』に関しては、シンプルなアプローチが効を奏したんじゃないかな。この映画を作るにあたり、ぼくらは他人になるべく知られないように、こそこそやったんだ。ほら、普通に会話を交わすときなんかも、小声で話すと、周囲の人は耳を傾けてくれるよね。それと同じで、期待を煽る映像をちらっと見せると、観客は『もっと見たい!』と思うようになる。最近の予告編はあまりにも説明的で、予告編だけですでにその映画を観てしまったような感覚にさせるようなものばかりだ。予告編は、ティーザーとも呼ばれるけれど、ほとんどの予告編はティーズ(tease=じらす)せずに、説明してしまっている。ぼくらは、ティーズする道を選んだだけなんだ」
――インターネットを利用することで、大きな反響を期待できると同時に、ネタバレによってダメージを被るリスクもありますよね。
「たしかに、秘密を保つのは大変だよね。でも、この映画の場合は、役者もクルーもみんな秘密を守るのに協力してくれた。だから、ばれて困るようなことはほとんどなかった。
ネタバレはたしかに嫌なものだし、せっかく大事にしていた秘密がばれてしまうとがっかりする。でも、情報を得ようとしたり、リークする人、それについてコメントを寄せる人っていうのは、みんな強い関心を持ってくれている、っていうのを忘れちゃいけない。だから、いちいち気分を害したり、怒りを覚えるのはおかしい。誰にも関心を抱いてもらえない事態と比較したら、ネタバレされるほど注目されるほうが、よっぽど幸運なことなんだからね」
――そういえば、“正体不明の何か”の姿を一切公開していませんね。
「映画でその姿を確認してほしいからね。ぼくは、映画館に行って、はじめてその正体を確認できるようなタイプの映画が好きなんだ。映画館に行くこと自体が、ひとつの体験となる。期待をやたらと煽る映画に限って、中身が伴っていない場合が多いけれど、『クローバーフィールド』は違う。きっと満足感を味わってもらえると思うよ」