JUNO ジュノ : インタビュー
「JUNO/ジュノ」が全米で大ヒットしたのも、アカデミー賞へ向けた賞レースをにぎわせたのも、全ては彼女が書いた1冊の脚本から始まった。初の映画脚本で見事アカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞したディアブロ・コーディが日本公開直前に来日。現在、ハリウッドで最も注目の脚本家である彼女を直撃した。(取材・文:佐藤睦雄)
ディアブロ・コーディ インタビュー
「私は日常的に街中で会話を盗み聞きしてるの(笑)」
――主人公ジュノの体験は、友人の体験になぞらえて書いたと聞きましたが。
「確かにそうだけど、リアルな現実に基づいている部分は少ないわ。ただし、里親夫婦の女性バネッサ(ジェニファー・ガーナー)はどんなことをしても赤ちゃんが欲しい女性だし、男性マーク(ジェイソン・ベイトマン)は現代アメリカ社会に多い、大人になりたがらない男性の代表。ジュノの両親(J・K・シモンズ&アリソン・ジャネイ)は私の両親をモチーフにしているわ」
――「シービスケット(馬)みたいにおしっこしてくる」なんてセリフが飛び出して大ウケでしたが、そうした笑えるセリフなどは常々メモしたりするのですか? また、ブロガーとして毎日のように何か書き留めたことが、脚本書きに役立っていますか?
「私は日常的に街中で会話を盗み聞きしてるの(笑)。それで、良いインスピレーションを得られそうなセリフなんかは書き留めたりして、覚えておくようにしてる。ブログに関しては、毎日書くことが脳の活性化につながるし、毎日書けば少しは腕も上がるわけで、ブログを書くことは脚本を書くことと全く違うと思うけど、何らかの役に立っていると思うわ」
――エレン・ペイジが主人公ジュノを演じて、どのように感じましたか?
「エレンはとてつもない才能の持ち主で、あまりにも完璧に演じてくれたわね。それに脚本をリスペクトしてくれた。とにかくこの作品を通じて、人間的なつながりもできたから、エレンとは一生付き合っていけると思う。彼女はすごくカワイイのよね」
――里親夫婦の男性マークはミュージシャンで、彼の趣味などはあなたの音楽の趣味が反映されていたと思いましたが、実際はどのような音楽を聴きますか?
「自分がジュノの歳の頃はパンクロックが大好きだったわ。今になってロックンロールの古典のようなローリング・ストーンズなんかを好んで聴いてる。だけど、今回のサウンドトラック盤に関して言えば、監督のジェイソン・ライトマンの趣味ね。すごく反応もいいし(全米アルバムチャートで第1位に!)、私も聴いているうちに大好きになったわ」
――10代の、特に女の子たちに共感を得られたことについてはどうお考えですか?
「普通、ティーンエイージャーをターゲットにした映画はバカらしくて浅はかなもんだけど、『JUNO/ジュノ』は非常に多面的であったことが若い人にウケたんじゃないかしら」
――アカデミー賞授賞式の興奮を振り返っていかがですか?
「何億人が見ていたんだろうと今更ながら考えるとコワイわね。とても緊張していたんだけど、実は付き合って間もない人と一緒に行ったので、『彼、楽しんでいるかしら?』ってそればかり心配していたわ(笑)」
――アカデミー賞を受賞して、ご自身に変化は?
「一番大きな変化はロサンゼルスに引越したこと。今では、(脚本を)書くことに関して製作サイドからのプレッシャーがきつくなったけど、それ以外はあまり変わってないわ」
――ところで、ペンネームのディアブロは、スペイン語の“悪魔(デーモン)”ですが、その由来は?
「ブロガーだから、皮肉っぽくディアブロって付けたんだけど、まさかオスカーを獲るとは思わなかったから(笑)。今では改名の予定もないし、もう少しこの名前を楽しもうと思っているの」