劇場公開日 2008年10月18日

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「手紙の役割が生きてなく、予定調和のごとく主人公のホリーが動いていく様に、ちょっと期待はずれ」P.S.アイラヴユー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5手紙の役割が生きてなく、予定調和のごとく主人公のホリーが動いていく様に、ちょっと期待はずれ

2008年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 死んだはずの夫から、消印のない手紙が未亡人となった妻の元に届くというミステリアスな要素がウリのラブストーリー。
 ネタバレしないけれど、肝心の手紙の役割が生きてなく、予定調和のごとく主人公のホリーが動いていく様に、ちょっと期待はずれしました。手紙の届く仕組みももう少しひねりがほしかったです。
 映像面でも、せっかくアイルランドロケを行っているのだから、もう少し映像美が活かせたはずです。宣伝で使っている紅葉一面のなかで愛を語り合ってるふたりの絵のようなシーンが本編にもあってもいいのではないでしょうか。

 脚本はイマイチでも、ヒラリー・スワンクとジェラルド・バトラーの競演は、さすがです。大喧嘩したかと思えば急転直下ベッドシーンに変わる感情の起伏が激しい二人の台詞の応酬を感情込めて演じきっていました。なかでもたびたびホリーの幻想の中で、復活する夫のジェリーの演じどころは見事です。生きていた頃とは、明らかに違うのだけど、明らかに幽霊でなく、存在感を感じさせるような演じ方でした。
 ジェリーが生きて話しかけているかのような映像が出てくるからこそ、余計にホリーの喪失感が強調されて伝わってきました。

 夫を亡くしたホリーの1年間の心の軌跡は、婚約を解消したセックス・アンド・ザ・シティのキャリーに似ている気がします。葛藤という点では、キャリーの方が深刻さがよく描けていたのではないでしょうか。その点、ホリーは夫が残してくれた数々の置き土産といえるようなイベントを楽しんでいる余裕も感じさせるものがありました。
 ホリーが悲しみを乗り越え、乗り越え新たなスタートを切るのは仕事か、恋なのかその辺のところも中途半端で、ワクワクされてくれないところに不満が残ります。
 但し、面白いのは、登場人物が恋やセックスに積極的なこと。
 ふたりの初めての出会いの時からジェリーは、熱くキスをホリーに迫っているのですね。単刀直入に、好きだ、キスしたいとバトラーが熱く口説のって、たぶん女性の観客には多いに感情移入してまうでしょう。
 しっとりしたラブストーリーを連想していたひとが大半でしょうが、実際は結構アクティブな恋の駆け引きが描かれているのです。
 きっとこんな口説かれ方をされたいと願うご婦人方の願望を叶える作品としてはぴったりだと思いますね。

 その点で。バトラーはとにかくセクシーでマッチョな男性として描かれております。対するスワンクは、チャーミングで時にセクシーな一面を見せる女性として魅力的でした。

流山の小地蔵