「メインディッシュは、男臭さのメガ盛り」ロビン・フッド 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
メインディッシュは、男臭さのメガ盛り
2時間半にも及ぶ長丁場だったが、面白さに圧倒された。
久々に男臭く骨太な洋画らしい洋画をストレートに堪能できたと思う。
ロビン・フッドってぇっと、かつてケビン・コスナーが務めた正義感が強い2枚目の英雄伝というイメージが根付いているが、今作ではスマートとは真逆に居るハリウッド随一の骨太俳優ラッセル・クロウを起用。
したたかだけど不器用で、薄情だけど義理堅く、寡黙で頼りがいのある新しいロビン・フッドを男臭くパワフルに表現。
ラッセル・クロウしか体現できない格好良さと愛嬌を兼ね備えたロビン・フッド像がダイナミックにスクリーンを駆け巡っていた。
徹底したリアリティが殺し合う世界の醜さを全面に押し出すことで、従来のロビン・フッドにはない人間臭さが揺るぎない魅力を生み出す。
遠征の地から帰還する際に戦死した幹部と誓った仁義を機に、妻となった地主のケイト・ブランシェットとの愛も飾り気のない熱さを帯びており、粋で味わい深い大人の御伽噺に仕上がっている。
今作のロビン・フッドの一番の特徴は、彼の十八番である弓矢の使用をセーブした事だろう。
前半の遠征戦をもって封印し、中盤は新しい王座に就いた冷酷非情なジョン王による独裁政治に困窮する民衆の叫びに重点を当てている。
繰り返される弾圧により溜まりに溜まる民衆の怒り。
そのエネルギーをロビン・フッドが一人一人の愛国心に訴え、団結させ、侵攻するフランス軍と海岸沿いで激突するクライマックスの肉弾戦に繋がっていく。
故郷のイングランドに、敵のフランスに、対する極限まで宿った想いが弓矢に全て注入され、渾身の一投が最後の標的目掛けて放たれる。
同時に、息を呑み戦を眺めてきた観客の快感が一瞬にして爆発する。
リドリー・スコットが掲げ続けてきた戦う男の美学が壮大に詰まった傑作として、映画史を語り継いでゆくに違いない。
つくづく感じたのは、いくら男が強くても女の色気にゃ〜かなわないってぇっことですな。
ラストでロビン・フッドを見つめるケイト・ブランシェットの瞳の純度が了見を淀みなく証明している。
愛する者をいつまでも信じ、待ち続ける心。
それが女の美学ってぇヤツなのかもしれない。
では、最後に短歌を一首。
『血の誓い 炎に込めて 帰還(かえ)る矢は 獅子に代わりて 冠を貫く』
by全竜