「やっと終わった長い長い前フリ」ハリー・ポッターと謎のプリンス かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
やっと終わった長い長い前フリ
自ブログより抜粋で。
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正直なところこのシリーズは、毎回なんとなく惰性で観ているだけだったりする。
このシリーズの持つ、友情と恋を巡るゆるい青春学園ドラマと、打倒ヴォルデモートという生死を賭けたサスペンス要素の振り幅が極端すぎて、毎度毎度まとまりが悪いと感じているので。
今回もやっぱりその傾向は変わらずだったが、今作は両者のバランスがかなりマシだったんじゃないか。
おそらくは原作が完結し、クライマックスへ向けての道筋が明確になったお陰で、ストーリー展開上の枝葉を絞り込めたのが功を奏した。
エピソードを詰め込んでいる割には駆け足感を感じなかったのもその表れだと思う。
また、6作目ともなると、ホグワーツ魔法魔術学校の装飾品などのおもしろギミック紹介も控えめで、ハリーを中心としたドラマに注力していたのもよかった。
原作は未読だが、これでもかなり刈り込んだんだろうという想像はつく。
それがもっとも顕著に表れているのが「謎のプリンス」=“半純血のプリンス(THE HALF-BLOOD PRINCE)”の扱いだ。
それはもう、びっくりするぐらいあっさりした描き方。“半純血のプリンス”の正体に驚くより、「タイトルにもなっているのに、これだけかい!」って驚きの方が大きかったわ。
そんな思わせぶりなタイトルとは裏腹に、物語的にはロン・ウィズリー(ルパート・グリント)を巡る恋愛模様の方が印象に残る。
その部分を学園ドラマとして観る分には、面白く愉しめたんだけど、その分、もう一人の“選ばれし者”ドラコの描き方は不足気味。
映画全体を包むダークな雰囲気を考えると、そういった謎に比重を置いた方が映画として引き締まったように思うんだけど、きっとシリーズ通してのハリポタファンはそれを望まないんだろうなあ。
ただ、原作が完結したことによるもう一つの好循環として、6作目にしてやっと、続きが気になる終わり方をしてくれたことは評価したい。
これまでは毎回毎回、その場で足踏みをするような終わり方で、続きものとしては煮え切らない印象がぬぐえなかったのだが、今作のエンディングは、8年も掛けた長い長い前フリがやっと終わって、クライマックスへ向けての大きな流れを感じることができたもの。
いよいよ物語も大詰め。次回作へ向けて期待が大いに膨らむ。