「敵を倒すには敵を知れ」ハリー・ポッターと謎のプリンス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
敵を倒すには敵を知れ
シリーズ6作目。
遂にヴォルデモートの復活が魔法界全体に知れ渡り、ハリーとヴォルデモートの避けられない宿命の闘いが描かれる最終作前なので、どうしても前振りのように思われがちだが、本作は極めて重要な一作。即ち、
敵を倒すには、まず敵を知れ。
ヴォルデモートの過去と秘密。
その孤独な生い立ちは、ハリーに近いものがあった。
闇の魔術に傾倒していったホグワーツ在籍時代。
ある教授から聞き出した禁断の魔法。
ホグワーツに再就職する事になったその曲者教授がひた隠す記憶とは…?
それは、ヴォルデモートが肉体を失っても生き永らえた謎であり、ヴォルデモートにとっては最大の弱点、ハリーたちにとってはヴォルデモートを倒す為の最大の術と成りうるもの。
その秘密に迫っていく…。
ベラトリックスとドラコの母ナルシッサと密談するスネイプ。
やはりこの男は、ヴォルデモート側…?
いつになく神妙な面持ちのドラコ。
彼に課せられた使命とは…?
ハリーが手にしたある教科書。
その持ち主“半純血のプリンス”とは誰…?
本作の大きな見所や謎はしっかり踏まえつつ、所々は大胆脚色。
死喰い人がマグルの世界を襲撃する冒頭シーンと、中盤のベラトリックスらにウィーズリー家が襲撃されるシーンは映画オリジナル。
「炎のゴブレット」に続き、ダーズリー一家がまた未登場。ハリーとダンブルドアが地下鉄で待ち合わせるシーンで始まるが、原作では、ダンブルドアがダーズリー家にハリーを迎えに行き、ダーズリー夫妻がダドリーにした“虐待”をチクッと皮肉り、地味なシーンながら印象に残ったのだが…。
ヴォルデモートの過去で、ヴォルデモートの母のシーンが全カット。ま、これは分からんでもないが…。
ロンが晴れてクィディッチ選手に!…実を言うと丸々カットされていたけど、すでに原作では前作でクィディッチ選手になっていたんだけどね…。原作でも映画でも、クィディッチが描かれるのは本作で最後。
危機的ご時世の最中、前半部分はかなりハリーらの色恋沙汰に時間が割かれている。
ディーンと付き合い始めたジニー。それが気になるハリー。
ラベンダーとラブラブカップルになるロン。それが我慢ならないハーマイオニー。
その為、タイトルにもなっている“半純血のプリンス”が随分隅に追いやられ、ヴォルデモートの過去やドラコの使命はラストの方で急ぎ足で伏線回収に留まってしまった感も否めない。
しかしながら、映画の出来映えは上々。ファンタスティックでダークな映像美はシリーズでも随一。
ハリーとダンブルドアがある場所に向かったクライマックスからスリルが加速。
まさか、あの人物が…!
あの男の手によって…!
衝撃のラストは、そのまま一気に最終作「死の秘宝」へ雪崩れ込む…!
さて、「死の秘宝」のレビューは前後編共劇場公開時に書いているので、シリーズ再見レビューはこれにて終了。
本当はいずれも簡易レビューで済ませようと思っていたのに、結局あれやこれや長文レビューに。
何だかんだ言って、やっぱハリポタが好きなんだなぁ、と再認識。
「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」までもうすぐ!