ミルクのレビュー・感想・評価
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性的マイノリティの人々の政治参加への始まり
監督のインタビューによると、ほとんど実話とのこと。
1970年代に米国で初めて、ゲイであることをオープンにして公職選挙に挑み、3回目の選挙で市会議員に当選、凶弾に倒れるまで精力的に活躍する様子が、ショーン・ベンの演技によってリアルに描写されていた。
特に、多数に支持されていたブライアント議員の法案に、たった一人で向かっていくところが凄かった。
誰かが公的な場で声を上げなければ、彼らの存在は社会的に認められなかった。
ゲイであっても、他の人と同じように希望を持って生きられるように。仲間への愛が伝わってくる作品だった。
同性愛者の権利獲得の過程
アメリカの公民権運動の歴史の一部として、同性愛者の権利が獲得されるまでの過程がリアルに描かれていると思う。ゲイがレズを当初は差別的に見ていたことや、黒人のゲイが全く登場しないことにも、よく注意を払ってみると、すごく現実に沿った描き方がされていると感じる。
ミルク氏は、まさか個人的な恨みを抱く精神不安定者に殺されるとは思っていなかっただろう。事実は、人の想像を超えて展開するものだ。
宗教的に同性愛を受け付けないという感覚を認めたとしても、杉田水脈氏の見解はやはり理解しがたいと言わざるを得ないのではないか。彼女の同性愛に関する見識は、事実誤認と根拠のない偏見のなせる技であろう。
伝記映画
ガス・ヴァン・サント監督
ショーン・ペン主演
ハーヴィー・ミルクの生涯を描いた伝記映画。
自ら ゲイだと公表して、3度目の立候補でサンフランシスコ市政執行委員に選ばれながらも
1年足らずで、同じ執行委員の男に暗殺されるまでを描いています。
最初に言っておくけど・・・(なにを!?)
伝記映画で泣いたのは「エレファントマン」以来かもw
映画は、ハーヴィー・ミルクが テープレコーダーに遺言を吹き込んでいるところから始まります・・・。
「私が暗殺された時のみ、テープを公開して欲しい」と・・・。
まだ、同性愛者に対して 今ほど理解のない時代に、社会の不平等をなくすべく 必死に活動していました。
1970年 ニューヨークで、スコット・スミス(ジェームズ・フランコ)と出会い
サンフランシスコに2人の居を構え「カストロ・カメラ」を始める。
そのころからハーヴィーは 人々が満足することをしたいと考え始める。
手始めに 自分たちの住む街から始めて それを徐々に広げていこうと考えた。
そして カストロ通りは有名になり世界中からゲイが集まる ゲイの街になった。
仲間も集まり、徐々にその実を結んでいき、いつしか「カストロ通りの市長」と呼ばれるようになる。
しかし ハーヴィーが政治活動に力を入れることによって
スコットとの距離も離れていき
スコットはハーヴィーの元から離れて行ってしまう・・・。
そして、アニタ・ブライアントの運動によってデート郡のゲイ公民権条例は廃止されてしまう。
その夜、ミネソタに住む 1人の少年からハーヴィーの元に電話が入る。
「僕は自殺します」・・・と。
両親が、彼を「治す」ために明日入院させると・・・。
ハーヴィーは、「君は病気じゃないし、間違っていない。
神様も君の味方だ。家を出ろ。」
今すぐバスで大きな街へ行くよう促すが・・・。
選挙には破れはするものの、その度に支持者は増えていった。
そして、3度目の立候補で 市議に選ばれた。
自らがゲイであると公表した上で 初めて公職者として選ばれた。
同性愛者である教職員を 性的指向を理由に解雇できるとする「提案6号」を可決させないために
自分たちの住む街以外では難しいと言われながらもカムアウトしようと 仲間に促し
「提案6号」よりも注目されるものが必要だと、犬の糞に罰金を科すという 新しい法案を思いつく。
その後 「提案6号」は否決されました。
そして、いつもハーヴィーを 快く思っていなかった 元執行委員のダン・ホワイトによって
サンフランシスコ市庁舎内で ジョージ・マスコーニ市長と、ハーヴィー・ミルクは射殺されたのです。
議員就任後、1年にも満たない1978年11月27日のことです。
金属探知機を避けるため、窓から侵入しているダン・ホワイトの姿もあります。
しかし、殺意を否定。
誰もが納得のいかない刑期(禁固刑)だったそうです。
ハーヴィー・ミルクの遺言が録音されているテープの最後はこんな言葉で結ばれている。
「希望がなければ ”私たち” は諦めてしまう。
もちろん希望だけでは生きられない。
でも、希望がなければ人生は生きる価値などない。
だから、君や あなたや あなたたちが、希望を与えなくては。
彼らに希望を・・・。」
映画の最後には、登場人物のその後が実際の写真と一緒に流れています。
同性愛者を理解することは 難しいけど、否定はしないし それ程不快感もない。
人によっては 不快に感じるかもしれないけど
そぉゆう域を超えて、こうやって頑張ってる人は応援したいと思うね。
死んで名を遺すってホント悲しいし、生きてれば きっと・・・もっと素晴らしい活動をしてたんだろうなーって思うだけに、ポロポロ泣いちゃいました。
ホント「エレファントマン」以来じゃないかって話!
美化された つまんない(´-ω-`)伝記映画よりは感動しますよ。
性同一性障害を描いた「ボーイズ・ドント・クライ」は可哀想だと思うけど
ヒラリー・スワンクが体当たりの演技してるってだけで、人が言うほど感動もしなかったしね。
128分の作品なので、時間のある方是非観てください。
人は"希望"を失ってしまっては生きて行けない。
“僕はハーヴェイ・ミルク、みんなを勧誘したい。民主主義にみんなを勧誘したい”
映画『ミルク』は、アメリカの歴史上マイノリティの人達が受け続けた差別と偏見に対して敢然と反対の立場に立って戦った、或る1人の男を描いた作品です。
彼の人生は、アカデミー最優秀記録映画賞に輝いた『ハーヴェイ・ミルク』でより詳しく語られています。
事前に『ハーヴェイ・ミルク』を観る機会に恵まれたので、作品中には沢山の人物達が登場するのですが、それらの登場人物達をすんなりと理解出来たのは今作品を観る上でとても参考になりました。
映画『ミルク』は、『ハーヴェイ・ミルク』の中でほんの少し登場する彼が生前に残したメッセージ(遺言テープ)を基に時代に沿って構成されています。
『ハーヴェイ・ミルク』では、彼本人の人物像としての魅力を、周囲の人間がその人となりをカメラに向かって話す事で、観客には笑顔溢れる映像が残された彼の姿からどんな人間だったのかを知らせる作り方でした。
一方映画『ミルク』を観ると、主演がショーン・ペンとゆう事も在るのでしょうが、ハーヴェイ・ミルクとゆう人物像をどこか闘士・策士と言った感覚で描いているのがとても目立ちます。
これは、『ハーヴェイ・ミルク』がマイノリティの人達の代表者として描かれていたのに対して、『ミルク』では映画の冒頭から終盤まで一貫して差別や偏見と闘った代表者としての描き方になっているのが影響しています。それには、多分にこの作品を監督したガス・ヴァン・サント自身が、自らゲイで有る事を公言している事実が大きく作用している気がしてなりません。
『ハーヴェイ・ミルク』を観た際に感じたのは、ハーヴェイ・ミルクとゆう人物の笑顔から醸し出されるユーモア感覚。人を惹き付けるカリスマ性が当時の時代のムーブメントと見事なマッチングを施していたのが分かります。
それだけに映画『ミルク』に於ける闘士・策士としての描かれ方には若干の違和感は少なからず在ります。
それでもこの作品にとっての評価がマイナスになる事は少ないでしょう。
「仕事や問題なんかじゃ無い。命を賭けた戦いなんだ…。」
作品中に語る彼の言葉には、マイノリティの人達が抱える真実の叫びに溢れている。
映画『ミルク』だけを観ると、ハーヴェイと市長の2人を暗殺する事になるダン・ホワイトとゆう人物の人間性が今一つ分かり難いかもしれません。その辺りの何故彼は孤立してしまったのか?と言った疑問点等は『ハーヴェイ・ミルク』を観るとより分かり易く描かれている様に思います。
逆に、当時のハーヴェイを始めとする同性愛者達を巡る周囲からの厳しい偏見の眼や圧力と言った物は、映画『ミルク』での方がより良く、詳しく理解する事が出来ると思います。
『ハーヴェイ・ミルク』でハーヴェイ・ミルク本人の人となりを知り。映画『ミルク』で時代に沿った当時のムーブメントと偏見の変わり様を如実に追体験出来る。
本編での中でハーヴェイは、選挙期間中に対立候補からある忠告を受ける。
「君の演説には希望が無い」
何気なく発した対立候補の一言が、その後の彼の人生を大きく左右する事になる。
以後彼の演説には、マイノリティの人達が日々の差別や偏見。そして圧力と云った物に対して、決して屈しない為の心の支えとして“希望”の2文字を旗印に大きな壁に向かって立ち向かって行く。
「人は希望を失ってしまっては生きては行けない」
マイノリティの人達に希望を!と訴え続けたハーヴェイ・ミルク。
“希望”とゆう2文字。
それは決してマイノリティの人達だけでは無く、人類全ての人達に平等に持ち得ている物だ!
信じて前に進んで行く事で必ず道は開かれるし、どんなに大きな壁が目の前に立ちはだかったとしてもやがては崩れ落ちる。
それを決定づけるのは今岐路に立たされている貴方の信念に委ねられる。
あの時ハーヴェイ・ミルクが針の穴程に小さな“希望の光”を手探りの中で掴み取り立ち向かった時の様に。
(2009年5月3日シネマライズ UP theater)
マイノリティ
やはりこういった同性愛者に限らずマイノリティで世間では生きづらい人はいるわけで、個人レベルでは認識していたものの大衆レベルではきちんと考えたことがなかったのでそのきっかけになった。おそらく、自分がそういったマイノリティに属する者だと感じる人にとってはまた共感の度合いも違うんじゃないかと思う。
はっきりとその気持ちはその人たちにしかわからないものだし、おそらく作中でミルクと関係をもった人は自殺未遂した者が多かったといったところも彼らにしか理解できない苦悩があったのだと思う。それこそ最後の遺言のセリフであった、希望がなければ人は生きていけないというもので、これはよく聞くような言葉ではあるもののこの作品を通して聞くと説得力が全然違ったものに感じられた。
政治は勝つことより集めることが大事
映画「ミルク」(ガス・ヴァン・サント監督)から。
この映画、「ゲイ」を取り扱った作品として取り上げられるのは残念。
同性愛者であることを公表した上で、米国史上初めて公職に就いた
政治家ハービー・ミルクの半生を描いた映画として、是非観て欲しい。
ゲイ・レズビアンといった同性愛者などにも、差別なく市民権を・・と
彼は、日夜動き回った。
しかも何度も何度も落選しても、その気持ちは揺るがないものだった。
その根底に流れていたのは、
「政治は勝つことより集めることが大事」という考え方だった気がする。
言葉を変えて「勝つことだけが問題ではない」とも・・。
その集めた気持ちを、ムープメント(動き)につなげていくことこそ、
彼の目指した道だったようだ。
今、国民の関心は総選挙であるが、
どうも自民党・民主党を中心に、選挙に勝つことに重点が置かれている。
大事なことは、自分の熱い想いと同じ人たちを、
どれだけ多く集めることが出来るか、それに尽きると思う。
大量の得票が期待できる組織票の取り込みも大切だろうが、
もっと大切なことは、より多くの人の心を掴んだ支持を得ること。
「マイノリティ」と呼ばれる社会的少数派の意見も大切に・・
現在のオバマ大統領にもつながる考え方が、
40年近く前から存在していた事実、さすがアメリカ・・と唸った。
さて・・日本は?
事実は小説より奇なり。その2
ハーヴェイミルク、最後の8年の物語。
とても良い作品で、ショーンペンの演技もすごい。
時代も状況も違うのだけど、ハーヴェイミルクの存在そのものが、現代につはがる一つの革命だったのだろう。
悲しいことに、見ていない人には「ゲイの映画」みたいな捕らえ方をされてしまっている。それが残念でならない。
あと、リバイバル上映の「ハーヴェイ・ミルク」を後に観るべきだったなぁと。なぜなら死後のこともやっているから。
なんにしろ、興味があるなら、「ミルク」「ハーヴェイ・ミルク」どちらも観ることをお勧めします。
ペン氏のミルク。
最初「ミルク」と聞いて、S・ペンが牧場主にでもなるのか?
と、真面目にそう思った作品で…あったが、違った^^;
1970年代のアメリカで、自らゲイであることを公表し、
マイノリティのために戦った政治家H・ミルクを描いた作品。
いつも無知で情けないが、私はこの人を全然知らなかった。
ペン氏が先日のアカデミーで主演男優賞をとって、にわかに
活気づく矢先、しかし無情なシネコンは近所でかけてくれない。
ならば…とりあえず都内のいちばん近いところまで出かけた。
そもそもペン氏が、マイノリティ代表のような人だから(爆)
この役にはもってこいだとは思った。いやしかし、ビックリv
冒頭で登場するやすでに、ペン氏がゲイに見えるのである。
何を話すでもなく、その風貌・態度・動き・目線、すべてがゲイ。
こんなにゲイのテイスト満載の始まりだとは^^;
すでにその時点で彼が主演男優賞をとった理由に納得できた。
なのでこの作品は、その内容が云々というより、
彼が、いかに、巧いのかを見せつけてくれる作品といえる。
もちろんミルク氏ご本人も(写真で出てくるが)魅力的な笑顔の
素敵な紳士である。どうして人間は、他人の趣向について、
あれこれと非難しなければ気が済まない性質を持つのだろう。
当時も現在も、自他の違いを受け入れようとしない人は多い。
彼らは本当に社会悪だろうか。子供に悪影響を与えたろうか。
差別や偏見を持たずに、真っ直ぐ人間を見られるのはむしろ、
子供たちのような気もする。
さて物語の方は、彼と運命の相手スコットとの出逢いに始まり、
彼らがサンフランシスコで小さなカメラ店を開くところから、
やがてそこがヒッピーたちの溜まり場となり、地元の保守派と
闘うようになるところまでの前半戦、公職に就いた彼が、自ら
新しい改革を打ち出していく後半戦へと静かに静かに進んでいく。
彼は常に自分に正直に生きているため、恋愛面での挫折も多い。
多忙に陥る彼を勇気づけ、別れてもなお支えてくれたスコットの
愛情なくして、とても精神面で耐えられなかったのではないか。
彼は人生の後半で自分の身を案じ、テープに遺言を遺している。
それが物語を引率する形で、彼が当時何を考えていたかを示す。
淡々と静かに進む冒頭から中盤までは、やや退屈かもしれない。
彼自身がすでに十分ドラマティックな存在であるため^^;
ペン氏を中心にズラリと並んだ若手・中年演技派俳優達に注目し、
彼らの扮装姿も楽しみたい。E・ハーシュ、J・フランコは
独特の色気を発しているし、J・ブローリンは憎々しいほど巧い。
D・ルナもA・ピルも巧い。紅一点に戸惑う彼らにはクスリ笑えた。
またひとつアメリカの歴史を学べた。感謝します。
(自他の違いを受け入れる寛容な精神が平和をもたらしてくれる)
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