「伝記映画としては「いまさら感」が残りました」ミルク あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
伝記映画としては「いまさら感」が残りました
2008年アメリカ映画。128分。2010年の記念すべき1本目の映画は本作となりました(別に故意に選んでいるわけじゃない)。ゲイの市議会議員としてアメリカで初当選した実在のハービー・ミルク氏を描いた作品で、監督は観るのが久しぶりなガス・バン・サント、主演は(個人的に苦手な)ショーン・ペンでございます。
内容は、ゲイというマイノリティ市民だったハービー・ミルク氏が立候補し、当選、そして殺害されるまでの物語。伝記映画としては常套的な語り口となっています。焦点に当てられるのは、もちろんミルク本人の素顔。
たしかに「ゲイ」のみならず老人などのいわゆるマイノリティ市民に「市民権」を持たせようとした功績は尊敬に値するし、それが初めてならなおさら。ただし、これを「映画」として扱うには、その描き方が退屈。
勇気をもって立ち上がり、自由の獲得のために闘い、そして道半ばで倒れるという展開は、今の映画ではすっかり使い古された語り口。いくら題材が「ゲイ」という新しい切り口でも、映画にたいして目の肥えた人たちには、何の心にも響かないと思う。
このような語り方はいってみれば20世紀のサクセス(&アンサクセス)ストーリーで、「政治」の威信が揺らいできている21世紀に採用しても、ただ「昔懐かしい物語」で終わってしまっている気がする。
念のため断っておきますが、これはハービー・ミルク氏が悪いと言っているのではないのです。月並みな語り口でミルク氏をありきたりな偉人に終わらせてしまったことに、本作の元凶があると思いました。
悲しいかな、映画を観るということは、それが古典であれ最新のものであれ「新しい視点」を持つことが目的の一つにあると思う。この頭打ちしている時代で、なにか新しい世界にいける「切り口」が欲しいのだ。
ショーン・ペンは昨年のオスカーを取っただけあって、それまでのイメージを覆すなりきりぶりです。そして皮肉なことに、彼の真に迫る演技が、「ゲイ」に対してわたくしの心に余裕をもたらしてくれませんでした。つまり完璧すぎるのです。
何かを伝えることは難しいなと思わされた作品でした。
辛口とは意外です。
自分ではけっこう甘いと思っていたもので(笑)
書いてしまってから、もっと突き放せばよかったと後悔することがよくあります。自分の泣き所をついてきた作品には盲目になってしまうのが、わたくしの批評の最大の欠点。
よりによって苦手なショーン・ペンを選んでしまったのですね(笑)
偉人を現代人にうまく伝えることが出来ないのは
映画でも小説でも残念なこと。。。
監督の力量不足でしょうか・。・;
共感入れたのですが、例によってカウントされなかったので
コメントさせていただきました。
今年も辛口レビューを楽しみにしております♪