「ペン氏のミルク。」ミルク ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ペン氏のミルク。
最初「ミルク」と聞いて、S・ペンが牧場主にでもなるのか?
と、真面目にそう思った作品で…あったが、違った^^;
1970年代のアメリカで、自らゲイであることを公表し、
マイノリティのために戦った政治家H・ミルクを描いた作品。
いつも無知で情けないが、私はこの人を全然知らなかった。
ペン氏が先日のアカデミーで主演男優賞をとって、にわかに
活気づく矢先、しかし無情なシネコンは近所でかけてくれない。
ならば…とりあえず都内のいちばん近いところまで出かけた。
そもそもペン氏が、マイノリティ代表のような人だから(爆)
この役にはもってこいだとは思った。いやしかし、ビックリv
冒頭で登場するやすでに、ペン氏がゲイに見えるのである。
何を話すでもなく、その風貌・態度・動き・目線、すべてがゲイ。
こんなにゲイのテイスト満載の始まりだとは^^;
すでにその時点で彼が主演男優賞をとった理由に納得できた。
なのでこの作品は、その内容が云々というより、
彼が、いかに、巧いのかを見せつけてくれる作品といえる。
もちろんミルク氏ご本人も(写真で出てくるが)魅力的な笑顔の
素敵な紳士である。どうして人間は、他人の趣向について、
あれこれと非難しなければ気が済まない性質を持つのだろう。
当時も現在も、自他の違いを受け入れようとしない人は多い。
彼らは本当に社会悪だろうか。子供に悪影響を与えたろうか。
差別や偏見を持たずに、真っ直ぐ人間を見られるのはむしろ、
子供たちのような気もする。
さて物語の方は、彼と運命の相手スコットとの出逢いに始まり、
彼らがサンフランシスコで小さなカメラ店を開くところから、
やがてそこがヒッピーたちの溜まり場となり、地元の保守派と
闘うようになるところまでの前半戦、公職に就いた彼が、自ら
新しい改革を打ち出していく後半戦へと静かに静かに進んでいく。
彼は常に自分に正直に生きているため、恋愛面での挫折も多い。
多忙に陥る彼を勇気づけ、別れてもなお支えてくれたスコットの
愛情なくして、とても精神面で耐えられなかったのではないか。
彼は人生の後半で自分の身を案じ、テープに遺言を遺している。
それが物語を引率する形で、彼が当時何を考えていたかを示す。
淡々と静かに進む冒頭から中盤までは、やや退屈かもしれない。
彼自身がすでに十分ドラマティックな存在であるため^^;
ペン氏を中心にズラリと並んだ若手・中年演技派俳優達に注目し、
彼らの扮装姿も楽しみたい。E・ハーシュ、J・フランコは
独特の色気を発しているし、J・ブローリンは憎々しいほど巧い。
D・ルナもA・ピルも巧い。紅一点に戸惑う彼らにはクスリ笑えた。
またひとつアメリカの歴史を学べた。感謝します。
(自他の違いを受け入れる寛容な精神が平和をもたらしてくれる)