「よくも悪くも豪華な作品」NINE 百ももさんの映画レビュー(感想・評価)
よくも悪くも豪華な作品
「確かに出演者は豪華だけれど、ストーリーそのものはたいしたことない」
私の周囲ではこうした感想が多く、正直鑑賞前はかなり心配でした。しかし実際観てみると、そんなに悪くない、いやむしろ、期待が低かったぶんおもしろかった。
豪華俳優陣の実力はお墨付き。特に主演のダニエル・デイ=ルイス、その妻役のマリオン・コティヤール、そして愛人役のペネロペ・クルスのやりとりは見応えがありました。歌と踊りも素晴らしい出来。ケイト・ハドソンの歌う主題歌と娼婦役のファーギーのパフォーマンスは白眉です。脚本が書けなくなってしまった映画監督がそのプレッシャーと複雑な女性関係により次第に追い詰められていくストーリーも、想像よりはずっとよかった。
主人公は良くも悪くも、女性がいないと生きていけない人。それゆえに自らの首を絞めているところもあるのだけれど、やはり彼には多くの女性が必要のようです。そのため、本作にも様々な女性が出てくるのですが、この女性の出し方がちょっと強引だったか。特にニコール・キッドマンとケイト・ハドソンの出演シーンは、美しく豪華な女優を出したい、それが自己目的化してしまっているように見受けられました。作品に華を添えているだけで、シーンそのものはたいして重要ではないし、出演時間もわずか。そもそも「有名女優、多数出演!」を売りにしてますが、なかなか強引なものです。たくさん有名女優を出したいから無理矢理ねじこんだシーンに見えなくもない。このへんからストーリーもダレてきてました。せっかく豪華な女優陣なのにデイ=ルイス以外との絡みも少なめ。
しかし、この点を差し引いても、優れた音楽と演技を楽しむには十分な娯楽作品になっているのではないでしょうか。個人的には、マリオン・コティヤールの美しさと寂しげな表情にやられてしまいました。