「豪華なイタリアーノ。」NINE ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
豪華なイタリアーノ。
『シカゴ』で名声をものにしたR・マーシャル監督が、
豪華出演陣でまた同じようなミュージカル映画を作った。
でもこの作品、完成までに随分と時間がかかったようだ。
脚本もキャストもけっこう変更されている。
それでもこれだけのメインが揃ったのは確かにスゴイ…。
予告で何度も聴いた楽曲の華やかさ、
M・イェストンが新たに書き下ろした三曲が含まれる。
特に耳に残るのは、サラギーナの「ビー・イタリアン」と
ステファニーの「シネマ・イタリアーノ」がかなりの出色。
それぞれの女優たちが自分の持ち味を存分に発揮して、
グイド(デイ=ルイス)を妄想の世界へいざなう役割を持つ。
相変らず「魅せる」という意味では巧いな、と感じた。
ただ、物語的にどうかといえば、ストーリーそのものが
幻想の賜物という感じなので、この煮え切らない監督に
「何やってんの?」とイライラさせられることにはなる^^;
マザコンで、決断力に乏しく、いざとなれば妻にたよる、
今まで尽くしてきた妻も、とうに別れた筈の愛人の姿を
見た途端「ブチ切れ」してしまう。まぁ、自業自得の世界。
原案の「8 1/2」はフェリーニの自伝的な代表作だが、
スランプに陥った監督を支える奥さんてホントに大変だ。
強烈至極な歌と踊りを披露する女優陣に交って、やや
見劣り(ゴメンね)孤軍奮闘するルイザ(M・コティヤール)
が私的には出色で、彼女の歌のみにドラマ性を感じた。
本当は夫を支える唯一の柱でいたいのに、煮え切らない
夫は回り道を繰り返しそれに気づかない。以前の自分が
彼に選ばれたミューズであったこと、外見の華やかさと
裏腹に忍耐で結ばれてきたような夫婦生活を、切々と
謳いあげる彼女の瞳に涙がいっぱいに溜まるのを見て、
フェリーニの妻J・マシーナの大きな瞳が重なって見えた。
というわけで、華やかな幻想の風景にため息を交えて、
ミュージカルの世界を堪能したあとにやってくる心虚しさ。
それでも映画は製作される。休むことなく次々と…。
初めて観た時、そっちが先なんですか!?という
ビックリ感に彩られた「8 1/2」に、「甘い生活」を交えた
オマージュ感たっぷりでまた観ることができたのは嬉しい。
(N・キッドマンのミューズ役は手の届かない高級感が◎)