「メソッド演技へのアンチテーゼ」トロピック・サンダー 史上最低の作戦 マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
メソッド演技へのアンチテーゼ
本作は随所にわたるパロディの数々、そしてメソッド演技に対する風刺が効いている。
ロバート・ダウニー・jr演ずるカークは役作りのためにメイクではなく皮膚整形で本物の黒人そっくりになり切るし、ベン・スティラー演ずるタグは本作が本物の戦場であるのにそれを映画のセットなのだと完璧に信じ切り、多くのトラブルに巻き込まれながらも演技し続ける。
麻薬組織に捕まり、彼の過去作である「シンプル・ジャック」を徹底的にやらされるシーンは演じるがあまり、その役に狂気的にのめりこむ危険性があることを笑える作りではあるがメッセージ性が真剣に伝わり面白かった。せっかく脱出できるのに演技をすることだけ考えてしまいまた戻ろうとするシーンは、スクリーンの外に出れるのにまた映画の中に戻ろうとする執着性を感じて哲学的だと思った。
タグとカーグは鏡合わせのような存在であり、捕まっていたタグを救出するシーンでようやくカーグも自らがメソッド演技に取りつかれていたことが自覚できて、メイクをはがす=役から脱却できる、というのを象徴的に見せていたところもなかなか興味深く見れた。
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