「手紙でそんなことをするなぁーッ!!」ダークナイト cross yukiさんの映画レビュー(感想・評価)
手紙でそんなことをするなぁーッ!!
濃すぎ・・・とにかく濃すぎ・・・。
2時間半でこのぎゅうぎゅう詰め感・・・緩急つけてる時間的余裕がなくて、とにかく「急」ばっかり。全編異様な緊張感でみなぎりまくってました。
じゃあ感想を箇条書きで。
・冒頭から銀行の支配人?役でウィリアム・フィクナーキター!!!!!この人大好き。意味ありげな登場→めちゃめちゃカッコええ活躍→でも一瞬で退場。しかも退場の仕方ギャグだし・・・残念。
・いたるところで言われ切ってることだけどヒース・レジャーのジョーカーすごすぎ。でも、ジョーカー単体で観るとものすげえな!って思うんだけど、あまりにすごすぎて他の役者が霞みまくり、全体的な調和が取れてないと思った。役者の仕事は個人プレーじゃなくてハーモニーだと思うので、もうちょっと抑えるか、もしくは他の役者がもっとテンション上げまくるべきだったのではないかと。
・意識的に事前情報カットしていてよかった。ハービー・デントがトゥー・フェイス化するのは次の映画だと思ってたもんで、彼の顔半分がガソリンに浸かったとき「うお、この映画でやっちゃうのかよ!」と素直に驚けた。
・僕はマシュー・マコナヘイとかオーウェン・ウィルソンとかみたいな、アメリカンイケメンの典型みたいな顔の人は大好物なので、アーロン・エッカートも大好き。でも『ダークナイト』では、前述のとおり全役者がヒース・レジャーに食い尽くされてるので、見た目的にもインパクト大な悪役なのに影が薄く残念・・・。トゥー・フェイス化した後の、デントの掘り下げが半端だったように感じた。
・そういえばバットマン出てたっけ?っていうくらいバットマンが印象に残らない。物語を動かすのは「バットマン」じゃなくて「ブルース・ウェイン」だった。「バットマン」は単なる実力行使担当で、「ブルース・ウェイン」のカワイソな境遇と悩みが大フィーチャーされてました。ていうかこの映画、確かにアクションシーンはド派手なんだけど、鑑賞後に印象に残ってるのはドラマパートばっかりなんだよね。
・レイチェルの手紙の下りは、見ている当方の心がバキバキに折られまくりました。「やめろー!!やめてくれー!!手紙でそんなこと言うなぁー!!!」と思いながら観てた。個人的にはこのエピソードがこの映画の中で一番痛い。「やるべきことの大きすぎる人間」に着いて行く気持ちになれない人間の自分可愛さと辛さよ・・・、「理解者に恵まれない人間」の堪え難き孤独感と自分勝手さよ・・・。
・音楽にブンブンサテライツが使われてた。
まぁそんな感じ。
確かにすごい映画だとは思うんだけど・・・僕的にはあまりのめり込めなかったなぁ。
たぶん、ジョーカー絡みのエピソードに、リアリティを感じなかったせいじゃないかと思う。
いや、ブルースやハービーに対する心理的な揺さぶりとか、そういう意味でのリアリティは感じたけど、「実力行使編」に、さっぱりリアリティがなくない?
どうやって病院やフェリーに爆薬仕掛けたんだよ、とか、どうやってマフィアの集会場まで単騎で乗り込めたんだよ、とか、あれだけのことをするには相当金が必要だろ、燃やしてる場合じゃないだろ、とか。あんな人間に手下をまとめる能力があるわけない、でもそれなりの組織があるらしい。ていうことは切れ者の参謀役がいなきゃおかしいのに、そんな奴影さえ出てこない。とか。
あ、あとさ、『バットマン・ビギンズ』のラストで、ジョーカーは「殺人の前科がある」とか言ってなかったっけ?前科っていうことは有罪になってる(=身元が割れてる)っていうことだよね?なのに今回留置場に入れられたジョーカーのことを、「身元の分かるものは一切ない」とか言ってて、その辺も「?」だった。
まぁジョーカーの「生活感」を、意図的に排除して描いてるんだろうっていうのはわかるんだけど、そこがあんまり好きになれなかった。
でももう一回観たいわ。
たぶんもっかい観ないと理解しきれんと思うし。
(今年の夏は「もう一回観たい」と思う映画が多い。これはいいことだと思う。ナイス2008年夏。)
だからこれは、あくまで「一回しか観てない僕」の感想っていうことで。
とりあえず、手紙のエピソードが心に痛すぎ。
心臓に鉄パイプ突き刺されて夜の砂漠に置き去りにされたような気分になる。
そんな映画。