劇場公開日 2008年8月9日

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「【沈黙の守護者】」ダークナイト ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【沈黙の守護者】

2020年9月17日
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ダークナイトを観ると、やはり、バットマンとジョーカーは、対だと思う。
昨年のジョーカーを振り返って、もしかしたら、あれが物足りなかったのかと問われるとしたら、それはない。
あれは、サイドストーリーとして、かなりの完成度だ。

僕は、ダークナイトの主人公は、実は人々なのだと思う。

勧善懲悪の象徴、バットマン。
完全無欠の悪、ジョーカー。
表の正義の顔から、恋人を失ったことによって、人の裏に潜む悪に落ちるハービー・デント。
そして、バットマンはダークナイト、沈黙の守護者に転じる。

僕達の正義は実は危うく、何か予想もできない出来事に出会って、ハービー・デントのように悪に転じないとは言えないではないか。
これは、スターウォーズでジェダイでさえ、ダークサイドに落ちてしまうことがあるのだというテーマとも一致している。

9.11の後、アメリカが遂行したイラク戦争には、実は大量破壊兵器はなかく、大義はなかった。
あったのは、復讐心と、米英の政府の嘘と甘い見通しだった。

思い込みの正義や、解釈は時に暴力になる。

「LGBTQは生産性が低い」とする某議員の発言も同様だ。
生産性は自由資本主義の目安だと思うが、人間性や民主主義の価値基準ではない。
しかも、この表現で傷つく人の数は数えきれない。

二者択一の中にあったハービー・デントとレイチェル。
自身が生き残った為に、悪に転じることになるハービー・デント。
もし、レイチェルが生き残る方だったら、彼女は悪に転じただろうか。

これと対比するように、
別々の船に爆弾と起爆装置と共に乗せられた一般人と犯罪者。
しかし、他者を見捨て、自分達だけが助かる道を、どちらも選択はしなかった。

ジョーカーは、暴力に実力行使で対抗しようとするバットマンには勝ったが、非暴力の人々には負けたのだ。
真の勝者は人々で、真の敗者はジョーカーなのだ。

人は自ら自らの心も救えるのだ。
悪や復讐の連鎖を断ち切ることは可能なのだ。

バットマンは勧善懲悪の負の側面をハービー・デントに見たのだ。
そして、ダークナイト、沈黙の守護者になった。

沈黙の守護者とは何だろうか。

きっと、自制心を備えた正義や、調和を希求する秩序、他者を慮る優しさ、道徳心、自ら判断しようとする勇気、そういうものの塊のようなものではないのか。

そうしたものがあれば、きっと、勧善懲悪のヒーローなんか必要ないのだ。
そんな示唆があったように感じるのだ。

ワンコ
talismanさんのコメント
2021年12月30日

コメントありがとうございます。本作がまさにノーラン監督の真骨頂、そうですね。人間の愚かさ素晴らしさ複雑さがすごくよく描かれていたと思います。

talisman
talismanさんのコメント
2021年12月30日

人々が主人公、確かに。

talisman
ワンコさんのコメント
2020年9月18日

ですね〜

ワンコ
kossyさんのコメント
2020年9月18日

ワンコさん、いつもお世話になっております。
今日18日からいよいよテネットですね~
ノーラン作品の揺るがないベスト1作品でもあるダークナイトを超えるのか?気になるところです・・・

kossy