「トロッコ問題」ダークナイト とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
トロッコ問題
レジャー氏の怪演で有名な映画。でも、それだけじゃない。
誰を助けて、誰を犠牲にするのか。
そして、その”誰”の中に、自分が、自分の大切な人がいたら…。
何がトリガーなのか。
すべてのカードが手元にあるわけではない。
相手が持っているのは?
まだ伏せられている山にあるのは?
誰が信用できて、誰が罠を仕掛けてくるのか、誰が勝ちを急ぐのか…。
そんなゲームの中心にいるのは”ジョーカー”。
”正義”そんな言葉が上ずってくる。状況によって変わる?変わらない?
誰が決める?それが正義だと。
”悪”。”悪””悪”…。それでさえ、状況によって変わる?変わらない?
ジョーカーの狂気。
バットマンの実像をさらして、脱価値したいんじゃない。
バットマンすらおもちゃ。バットマンを使って、人々が右往左往する姿が面白い。追い詰められていく姿が面白い。
誰かが苦しんでいる姿が面白い。そう追い込むことが面白い。
反社会性パーソナリティ障害。程度の差こそあれ、パワハラ…身近にもいる輩。
そんなジョーカーの作り出した設定の中で右往左往する人々・もがき苦しむ人々。
バットマン・ゴードン・デント然り。
渋めのおじさまーアルフレッドとルーシャスのスタンスは揺るがない。二人の信念は対極にあるのだが。
目的のためなら手段を選ばぬアルフレッド。
目的のためとはいえ、”その”手段に異を唱えるルーシャス。
そんな人間模様が、確かな演技力を持つ役者によって展開される。
レジャー氏があれほどの怪演をしていなかったら、よくある人間ドラマになっていただろう。
ベイル氏が、エッカート氏が、オールドマン氏が人間臭くなかったら、ジョーカーの異質さが際立たない。
ケイン氏の、フリーマン氏の飄々としながらも落ち着いた演技がなければ、騒がしいだけの映画になっていただろう。
そして、名もなきゴッサム市民、ジョーカーの部下でさえの、普通の狂気が、町全体の混乱を際立たせる。
おっと、こんなところにマーフィ氏が…。
だが、人間模様だけではない。
息の根が止まるような激しいアクション。爆発。
それでいて、車上に着地するときや頭から落下するときのバットマンの美しさ。
次から次に展開していって、あっという間と感じるか、盛りすぎで食傷気味となるかは、体調もしくは好み次第。
そんな緊迫した物語の舞台。高層ビルが林立する雲の上。宝石箱をひっくり返したような煌びやかな夜景。
なんて映画だ。