「ハリウッド娯楽映画の底力」天使と悪魔 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッド娯楽映画の底力
お馴染みのシリーズ第2弾ですが、スケール感の物凄さは前作とは比べ様も無い。
劇中に「世界中に信者10億人…」云々とのセリフのやり取りが在った様に、題材に宗教が関係しているだけに、全ての信者の人達に不快感を与えず、更にミステリーとしても一流品の内容の作品に仕上げる苦労は並大抵では無い筈です。
結果は娯楽映画として、極めて優れた作品となっていました。無論「ご都合主義だ!」だの、「あそこのシーンがあれこれ…」との意見は出て来るでしょうね。実際私個人の意見としても、この作品で一番キーワードになる“反物質”が、一体何故《このタイミング》で出来上がったのか?…なんて辺りは疑問を持たない訳ではありません。
(ひょっとして犯人は“このタイミング”に併せて完成する様に依頼していましたっけ?原作は未読なもので…(苦笑)映画の中での説明は無かったと思うが…。)
それにしても、ローマ・バチカンを縦横無尽に走り回るロケーションは圧巻でしたね。多少はCGも使用しているのでしょうが、あれだけ世界遺産の街並みを駆け抜けてくれると、何だかその地に行った気分に…はならんか!やっぱり直接行ってみたくなりますかね。
ストーリーの流れは相変わらずサクサク進んで飽きさせ無い。余りにもサクサクし過ぎていて苦笑してしまうのもやむを得ないのですが、流石にロン・ハワード監督サスペンスの盛り上げ方が旨いわ。
1人目の礼拝堂の場面なんか、踏み込んだ時に映る靴のショットなんぞは結構ゾクゾクしましたよ…。「意味無え〜」って人も居るかもしれないですけどね。
だけど、この作品に於ける一番の弱点は、やっぱり“時間の概念”に説得性が今ひとつ欠ける辺りでしょうかね。
過去の映画の歴史に於いても、この足枷を最大限に生かしたのは『ミクロの決死圏』だけか?と言う位の難題ですので多少は割り引いて見ても、“後○分”と字幕が出る度に、「流石にアメフト発祥のお国柄!」と苦笑いをしてしまう程でした(笑)
個人的に一番興味深く観たのは、バチカンとゆう“巨大なる聖地”の内部なのですが、幾ら外観部分の撮影許可は得られても、肝心の内部のまた更なる内部に入っての撮影等は有り得ない筈。
この辺りの巨大なセットを組んだ撮影こそが、ハリウッド娯楽映画の醍醐味ですね。どこまで説得力が画面から観客に伝わるかでしょう。
多くの信者の方にはやはり、神秘的な《コンクラーベ》がどうやって進められているのか?を映像で見せられたら堪らないモノが在るでしょうね。
中盤辺りからの、歴史的な建造物の中に最新鋭の資料倉庫が存在していたりするのは、「やっぱりハリウッドだなぁ〜」などと思いつつ、サスペンス溢れる演出を堪能しました。
最後の最後に…これは絶対に言えないのが辛いのですが、作品中にはかなり巧妙にミスリードを誘導させながら伏線を張り巡らせています。
それだけに“あの”衆人環視の場面が…観終わってしまうと「幾ら何でも…」では在るんですがね。
宗教VS科学とゆう相反する主題の中で展開される、“聖地”としての表と裏。更に“聖人”としての表と裏を余すところなく描く《天使と悪魔》。
そんな二律相反する主題を尊重して、今回のこのレビューも褒めては貶す方式を採用しています。
嘘です(笑)
とにかく娯楽映画として、最高峰のスケール感を保ちながら、万人の観客の期待を裏切らず。何よりも分かり易さを重視した作品作りには感心してしまいます。
端っから「馬鹿にしながら観てやろう…」なんて色眼鏡で観なければ、満足出来る娯楽度満点の出来だと思いますよ。
冒頭から作品を影で支えていた、ハンス・ジマーのスコアが素晴らしかった事も記しておきます。
(2009年5月17日TOHOシネマズ日劇1)