劇場公開日 2011年8月12日

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「映像面や音楽面に重きを置いた叙情的散文詩みたいな難解作品」ツリー・オブ・ライフ 覆面A子さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0映像面や音楽面に重きを置いた叙情的散文詩みたいな難解作品

2013年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

難しい

寝られる

見てきました、ツリーオブライフ。
もっと人間的に重い話を想像してたのだけど
映像面や音楽面に重きを置いた叙情的散文詩みたいな作品で。

出演シーン、エピソード部分の少なさに想像が膨らむ部分も多いけど
ほとんど感情移入ができなかったのは
私がむしろブラピ演じる「横暴で矛盾だらけの未熟な人間」だからかも。

上映中、ずっとGraceとNatureについて考えてたけど
ヨブ記に代表されるGrace的な生き方は人生かけても理解できない気がします。

物語は「ツリー・オブ・ライフ」のタイトル通り、宗教の色が濃く、
旧約聖書…取り分け「ヨブ記」を意識した作品に思えました。
そして、ギリシャ神話の「オイディプス王」から派生する
フロイトの「エディプス・コンプレックス」も
この話の根底に根付いてい(るように思い)ます。

「善良な人間は利用される」と言い切る父は
冒頭で言う所の「Nature(神の恩寵に浴していない未開の精神状態.)」
威圧的で人を支配することで自己のコンプレックスを隠すタイプの人間。

一方で、あらゆる不条理も屈辱も、すべてを受け入れようとする母は
冒頭で言う所の「Grace(神の恩寵を受けいれんとする精神状態)」

そんな二人のもとに生まれた3人の息子たちは
父を罵りながら、畏れながら、母を愛しながら、軽んじながら…育っていきます。

しかし一家の次男が19歳の若さで突然世の中を去ることで、
Nature寄りであった父と、Grace寄りであった母の価値観が崩れていく…

すみません、私の解釈としてはこんな感じなんですが。
次男は何故死んだのかというような具体的な説明のない
また話の流れも全然時系列でないコラージュ的なこの作品。

所々に犯罪者が出てくるのでひょっとしたら犯罪に巻き込まれたのかもしれません。

少なくとも私は話の筋的に「奪われた」「殺された」的な意図を汲み取りましたが
それが正しいかは定かではありません。

時系列は後半に進むにつれ、更に複雑化し、
ついには何十才も隔たりがあろうはずの父親のブラピと息子のショーンペンが
飾り気なく同じ場所に立ってしまいます

「いかにも」な宗教色色濃いシーンだけど印象強く美しい。

映像美としては鮮烈でこの後も何かにつけ思い返すことはあるとは思いますが、
作品としての明確さは…私には高等すぎたかも??

見方としてはCM等でばんばん流れているような
「親子の絆とは?」等の内容としての濃さ・重さを期待して観ると
かなりがっかりすると思います。

全編を通し物語の背景や人物の説明等は殆どなく、
それらは見る人の憶測や見解に委ねられるのでかなり難解。

…見ていてスタンリー・キューブリック作品的な色味が強い気がしました。
(実際、配給会社の方も【21世紀の「2001年宇宙の旅」】と仰っていました)

一方で映像やカメラワークはとても印象強かったです。

世界中から撮り集めたナショナルジオグラフィック的美しくも力強い映像は
地球規模の壮大なものから昆虫へのマクロ的なものまで種種集められ
時にCG加工を施され、固執に近い愛情を持って映し出されています。
当初8時間にものぼるフィルムを集約するのにかなり時間を要したとか。
話の合間合間にちりばめられたそれらのV、
例えば幼子と母が、兄弟が遊ぶ中に昆虫を始めとする小生物が息づいていたり…
或いは海、或いは火山、あるいは地球、あるいは太古の恐竜…
それらひとつひとつの丁寧な描き方は目を見張るものがあります。

美しい自然美の映像が流れる中において、
ストーリーの核は、もはやブラピでもショーン・ペンでも父子の話でもなく
「脈々と繋がる命の系譜」の抽象表現自体が
主人公なのでは…と途中から思えてきたほどです。

丁寧に演じている彼らを横っちょに置くことで
スケールの大きさを語りたいのかな?っていう。

この手のものは賛否両論だと思いますが
実際、カンヌでもスタンディングオベーションとともにブーイングもあったとか。

またアメリカの劇場では
「ブラッド・ピットとショーン・ペン 期待で見て内容に不満があっても返金しないよ」
…って掲示もあったそうで、それだけクセのある作品です。

睡眠不足の時だと確実に見ながら落ちそうな気もしますが
涼しい中で、迫力ある「命の樹」に抱かれて眠る…ってのは
ある意味、最も贅沢な時間である様な気もします。

ご覧になって「退屈な作品」と思ったら、そのまま寝てしまうのもアリかと。

スメタナのモルダウが流れてきたあたりでは、
あまりの心地よさに落ちそうになりましたもの、ワタシ(爆)
あのまま眠ったらさぞかし気持ちよかったろうなぁ…って!

以上、Tree of Lifeのなんちってレビューでした♪

これ、ディズニーから配給って結構異色、
間違っても小学生連れで行っては行けない気がします^^;

それにしても、なんだろうブラピ。
役により口元とか目つきとか骨格とか変わる気がする。

音楽家を目指しつつ、成り切れない、
おそらく平凡な家庭に育ったコンプレックスだらけの
弱い人間性とか丁寧に表現してる。

カッコイイ「ブラピ様」を脱ぎ捨ててのおっさん臭さ。
わざと腹周りに肉でも付けたのでは?とか思わせる佇まい。
いい役者さんになってる気がするのに、
ここの所あまり良い役に恵まれてない気がする。

<追記>

最後に。私の強い妄想としては
根幹の肉付けをスティーブン・キングに解説してもらいたいなぁとかちょっと。
きちんとした筋は自分で作らなければいけないのがちょっとしんどい作業。

覆面A子