「庶民版『SATC』!?」ジェイン・オースティンの読書会 Chemyさんの映画レビュー(感想・評価)
庶民版『SATC』!?
『セックス・アンド・ザ・シティ』のヒットで、にわかに40代女性のオシャレなライフスタイルにスポットがあたっている。本作は地味版(!?)『SATC』と言ってもいい(かもしれない・・・)。40代に限らず本作では20~50代の女性(+30代男性)の”普通の”ライフスタイルが描かれる。『SATC』のような高級ブランドも華やかな恋愛模様も都会的なセンスも登場しないが、教師や司書といった堅実な職業を持つごくごく普通の女性たちが、人生の特効薬とされるジェイン・オースティンの読書会を開くことで、等身大の恋愛模様が心温まる。『SATC』のキャリーたちのような華やかな生活のできない庶民の私には、本作の彼女たちのライフスタイルにとても憧れる。冒頭、日常の些細なイラだち描写から既に作品に引き込まれる。自販機にお札が入らないとか、駐車券に手が届かないとか、コピー機のカバーが閉まらないとか、様々な「あるあるネタ」が楽しい。始まってから数分で、もう彼女たちを身近に感じさせる演出が効いている。「読書」という馴染みがありつつも、話題として取り上げられない地味な行為が、こんなにも人生を豊かにしてくれるということを、もっと広く知らしめたい。本作の登場人物と、ジェイン・オースティンの小説の登場人物が、さりげなくリンクしている点も楽しい。オースティンを語り合うことで、自分自身も見つめなおし、危機を迎えていた夫婦は元の鞘におさまり、独身者には新たな恋が始まる。ラストシーンでいきなりとってつけたようなハッピーエンドになる点が少々気になるが、本作を観て、40代女性の背伸びしないオシャレなライフスタイルをお手本にしつつ、絶対にオースティンの小説を全部読もうと心に誓ったのは私だけではないはずだ(笑)。