ジェイン・オースティンの読書会 : 映画評論・批評
2008年4月8日更新
2008年4月12日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
文学と映画の幸せな結婚の好例
ジェイン・オースティンのキャラクターたちを現代に持ってきたら……という発想が楽しい。小説の主人公をそのまま現代に焼き直すのではなく、性格や設定のどこかが小説と何らかの形でリンクしているという、ひねりとユーモアのある構成も実に大人好みだ。オースティン・ファンにはそのリンクを見つける楽しみがあるし、小説を知らない人は映画に触発されて読んでみたいと思うはず。文学と映画の幸せな結婚の好例だ。
オースティンの魅力はキャラクター描写の面白さにあるが、この映画の読書会に集まった6人のメンバーの右往左往する感情の行き違いは、オースティン自身が現代に甦って采配を振るっているかのような味がある。波瀾万丈のストーリーはないけれど、キャラクターたちの日常感覚と人間関係の組み合わせが絶妙。サッと一筆描きしたようにシンプルに見えるが、そこから匂ってくる感情はかなりリアルで、見る人によって深くも豊かにもなる。これぞ、ディテールで見せるアンサンブル・ドラマの魅力。派手さはないが俳優全員が自分の役にはまって見えるのが成功の証しだ。彼らが、オースティンの小説に導かれてトラブルの穏やかな解決法を見出すラストに、「そうだよね」と素直に納得できる自分にホッとした。
(森山京子)