「【”モンスターのままで生きるか、善人として死ぬか。”今作は、哀しき男が抱える、過去のトラウマの数々と妄想と現実が入り混じった脳内フル回転で観る大どんでん返しサスペンスミステリーの逸品である。】」シャッター アイランド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”モンスターのままで生きるか、善人として死ぬか。”今作は、哀しき男が抱える、過去のトラウマの数々と妄想と現実が入り混じった脳内フル回転で観る大どんでん返しサスペンスミステリーの逸品である。】
■ボストンの沖合に浮かぶ「シャッター アイランド」には、精神を病んだ凶悪な犯罪者を収容する病院があった。
四方を海に囲まれたこの島からある時、自分の3人の子を惨殺した女性患者レイチェル・ソランド(エミリー・モーティマー)が姿を消す。
連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は捜査のため相棒チャック・オール(マーク・ラファロ)とともにこの島を訪れる。
島には、ジョン・コーリー医師(ベン・キングズレー)を筆頭とした医療団と、A,B,C棟に隔離された犯罪者が収容されており、特に凶悪犯はC棟に収容されていた。
◆感想
・冒頭から、テディ・ダニエルズは、数々の過去のトラウマに襲われる。
1.放火魔、レディスにより焼き殺された妻ドロレス・シャネルネ(ミシェル・ウィリアムズ)が、彼が抱擁する中で灰になって行く幻想的なシーン
2.第二次世界大戦末期、ナチスのダッハウ収容所で見た多数の凍結したユダヤ人の死骸。そして、そこに踏み込んだテディ・ダニエルズは自決しようとしたナチスの司令官を冷徹な目で見降ろし、ナチス兵たちを並ばせ銃で虐殺するシーン。
その光景を思い出しながらテディ・ダニエルズが言った言葉。
【俺は、殺人犯だ。】
・シャッター・アイランドで経験する数々の出来事。
1.テディ・ダニエルズは、ある日、相棒のチャック・オールが居なくなり、崖下に落ちた彼の元に崖を降りて駆け寄るも、それは見誤りであり、崖を見上げた時に亀裂の中から見えた灯り。そしてそこにいたのは逃げたはずの女性患者レイチェル・ソランドだったが、別人の女性だった。
彼女は、且つてシャッター・アイランドの医師であったが、島内の灯台で行われているジョン・コーリー医師らによる、ロボトミー手術について語り、テディ・ダニエルズ自身が彼らに、様々な薬を盛られている事を示唆する。
2.テディ・ダニエルズは灯台に侵入すると、そこではジョン・コーリー医師が、机に向かって仕事をしており、テディ・ダニエルズに対し、”真実”を告げる。
<今作は、冒頭から不穏な空気が横溢しているが、多くのシーンでテディ・ダニエルズ自身が現実と虚構の世界を彷徨っている事が、仄めかされる。
それは、彼がC棟を捜索している時に、矢鱈とマッチを擦る姿であり、そこで現れる焼き殺された妻ドロレス・シャネルネが、言った言葉でも表現されている。
【貴方はここに来てはいけないのよ・・。】
今作は、哀しき男が過去のトラウマにより、自身の犯した罪を忘れて虚構の世界に生きて居たが、最後の最後で全てを悟り、ロボトミー手術を受ける決意をする過程を描いた、脳内フル回転で観る哀しくも切ないサスペンスミステリーの逸品なのである。>