「全てを疑え 本作の結末すら疑え これこそが本作の本当のテーマだったのだと思う」シャッター アイランド あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
全てを疑え 本作の結末すら疑え これこそが本作の本当のテーマだったのだと思う
スコセッシ監督の初ミステリー作品
原作の時代設定が1954年だから、ヒッチコックの黄金時代の真っ最中の時代だ
「ダイヤルMを廻せ!」、「裏窓」はその年の作品だ
ヒッチコック作品へのオマージュやリスペクトが散りばめられているのはすぐに気が付くところ
フェリーの船上シーンや、ジープに乗って会話するシーンは、ヒッチコック作品の古典的な合成シーンをわざとチープに再現している
監督がノリノリなのが伝わってくる
さて、ヒッチコックなら粗方観ているというようなミステリー映画好きならば、中盤でオチはだいたい予想できたと思う
ヒントも伏線も沢山フェアに提示されている
全ては逆であり、テディの妄想であった
そういう物語だ
そういうことであらゆるシーンが説明がつくようになっている
何気ないセリフも仕草も視線も、すべてそれで整合するようになっている
だが、果たしてそうなのか?
それもまた病院側がそうテディに思わせているのでは無いのか?
そのような疑念を観客が持つようにスコセッシ監督は解釈の余地を残すように撮っているのだ
種明かしをしたなら、全てを明確にして構わない
むしろ、そうすることによって観客はどんでん返しの決着が確実になり安心できる
そこにカタルシスも与えられるだろう
きっとヒッチコックならそうしたはずだ
しかし、本作はそうではない
テディの妄想だったことで決着したようで、まだ疑念がモヤモヤと残ったまま観客はエンドロールを迎えてしまうのだ
きっとそれはわざとだ
全てを疑え
本作の結末すら疑え
それこそが監督が、本作で撮りたかったことなのだと思う
今日は2021年12月8日
日本のコロナワクチン接種人数は1億人を超えたとのニュースを目にした
自分も2回の接種をとっくに終えている
しかし世の中には反ワクチンの人がいるらしい
何か良くわからない陰謀論を主張していると言う
まるでテディのようだ
反ワクチンの彼らは、テディのように妄想の中にいるのだろうか?
彼らは大真面目に陰謀を暴こうとしているのかも知れない
シャッター アイランドは現在進行形だったのだ
いや、それで斬って捨ててよいのだろうか?
反ワクチンだけでなく、他の事ならどうだろう?
メディアで報道されることは、全部本当にそうなのだろうか?
テレビや新聞で報道されたことは全て正しいことなのだろうか?
そうではないことを私達は知っている
メディアの政治的な志向により、彼らが恣意的に事実に角度をつけた記事にして、全く違う印象にしたり、実際は逆であったり、そもそも無かったことを記事にしていたりしていたではないか
そのことを私達は知っている
かって、それを指摘し反論しようものなら、テディのように狂人扱いされたりしたことも知っている
ならば世の中全てがシャッター アイランドではないか
最後のセリフ
「どっちがましかな。
モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか」
意味が全く違うように聞こえて来はしないか?
世間が正しいと思うことが、本当に正しいのかどうか、
怪しいと思うこと、おかしいと思うことを、おかしいと言える「モンスター」で生きるのか
それとも大人しく波風たてずにメディアの言うことを疑いもせず、鵜呑みにして信じる「善人」として、自分の頭で考えることを止めた存在になるのか
全てを疑え
本作の結末すら疑え
これこそが本作の本当のテーマだったのだと思う