「「差別」を問う映画」愛を読むひと ちんさんの映画レビュー(感想・評価)
「差別」を問う映画
2021年8月19日
たまたまNetflixで発見し視聴。
邦題とあらすじだけを見て、先が読めないなと思いつつ視聴しましたが、明らかに邦題ミスな気がしました。
たしかに「愛」はあったのだと思いますが、そこがテーマではない気がしました。
映画を見ながら、文盲に気づき、あっと言わされました。
今の日本人にはあまり縁のないことなので、見落としていましたが、海外ではありえる話なのです。
文盲に気づき、今までのハンナの言動に納得しました。(本を読ませる、昇進を断る、筆跡鑑定を断る)
しかし、映画を観終わっても、ハンナの自殺の原因やマイケルの行動(ハンナの遺言に基づいて寄附活動する)、収容所から生き残った女性の何かを悟った感慨深い表情などに納得がいかず、もやもやしました。単なる恋愛感情では片付けられない描写でした。
そこで他にレビューを拝見していると、「ロマ(ジプシー)」という存在を挙げている方を発見し、納得しました。
原作を読んでおり、ヨーロッパの人種差別事情に明るくないと分からないテーマでした。
流浪の民で、ドイツを含め、ヨーロッパ中から差別を受けていたのがロマです。
その差別の歴史はナチのユダヤ人差別より歴史が深く、流浪ゆえ、文盲である者が多いという特徴があります。
ハンナは文盲ということがバレるとロマだと思われ、差別されるのが怖かったため、秘密にしていましたが、文字を学ぶことで自分のした行為を知り、結果的に自殺という選択をとったのでしょう。
終盤に、ニューヨークに住む収容所からの生き残りのユダヤ人が「文盲はユダヤ人に相応しくないテーマかもしれませんが」というセリフは、まさにロマのことをさしたセリフなのでしょう。
とても良い映画でした。ただ、自分の無知を改めて思いました。