ラブリーボーン : インタビュー
「ロード・オブ・ザ・リング」3部作のピーター・ジャクソン監督が、世界30カ国以上で1000万部を超える売り上げを記録したベストセラーを映画化した「ラブリーボーン」が1月29日より公開される。14歳で殺害された少女スージー・サーモンが、現世と天国との“中間の地”に留まり、自分が死んだことによりバラバラになっていく家族や初恋の人を見守っていく姿をファンタジックに描いたドラマ。主人公スージーを演じたシアーシャ・ローナンが初来日を果たし、インタビューに応じた。(取材・文:編集部)
シアーシャ・ローナン インタビュー
「いつかコメディをやってみたい。私は人を笑わせるのが大好きなの」
ジョー・ライト監督、キーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」(07)で、13歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされ、一躍注目を集めたシアーシャは、94年4月12日生まれで現在15歳。大物監督との仕事も続々と決まり、早くも演技派としての風格も漂っているが、素顔は明るいティーンエイジャー。初めての日本にも、「会う人すべてがフレンドリーで、空港から来る途中も、すごく清潔な街だなと思ってたし、夜はネオンがすごくキレイ!」と澄んだ青い瞳を輝かせる。
「つぐない」では、自らの嘘により姉とその恋人の運命を引き裂いてしまうブライオニー、そして「ラブリーボーン」では14歳で殺害されてしまうスージーと、代表作はいずれも過酷な運命を担った役どころ。そうした難役を確かな演技力で体現し、作品を支えてきたシアーシャだが、意外にも本人はコメディが大好きだそう。
「『サボテン・ブラザース』とか、ああいうものすごくバカバカしいコメディが大好き(笑)。もちろんロマンスもドラマも、本当に良いものは好きだし、ミュージカルだったら『ヘアスプレー』のような、楽しくて素晴らしいものが好きなの。あとスリラーやホラーもね。でも、全く意味がないのに興行的に成功しているような大作は好きじゃない」
さまざまなジャンルに興味を示すシアーシャだが、「ラブリーボーン」はドラマ、スリラー、ロマンス、ファンタジーなど、さまざまな要素を内包した作品。それゆえに映像化された様子はなかなか想像がしにくかったと思うのだが……。
「原作の読者もそうだと思うけど、私も脚本を読んだときに、スージーが留まる“中間の地”というのが、ちょっと想像しにくかった。どういうふうに映像化するのかなと思ったし、撮影中もブルースクリーンを使っているので、自分でもどうなるのかはっきりと分からないところもあったの。でも、出来上がってみたら本当に素晴らしい、美しい映像になっていて驚いた。しかも、あの世界にはスージーが生きていたときに馴染みのあったアイテムがいろいろと出てくる。そうした14歳の少女の世界をきちんと取り入れていたから、とても分かりやすく、うまくまとめたなと思ったの」
その独特な世界観を映像化したピーター・ジャクソン監督の手腕、人柄を、シアーシャは絶賛してやまない。
「彼との仕事は、本当に楽しかった。彼は情熱的でビジョンがあって、すべてに全力投球するエネルギッシュなところもあるけど、とても優しくて地に足のついた人。撮影地のニュージーランドを訪れたとき、私は20数時間もかけたフライトでクタクタになっていたんだけど、泊まる場所の近くに彼の家があるから、両親と一緒に訪ねていったの。そうしたら、裸足の彼が紅茶を入れてくれたわ(笑)。そういう人なの。撮影中も、たとえばジャック(マーク・ウォールバーグ)がトウモロコシ畑で殴られるシーンがあるけど、すぐにトウモロコシを片付けなきゃいけないときがあって、そういうときも彼は率先して片付けを始めてた。彼にとってエグゼクティブプロデューサーとかアシスタントディレクターとか、そういった肩書きは一切関係ないの」
次回作は、これまた巨匠のピーター・ウィアーがメガホンを取る「The Way Back」で、すでに撮影済み。そして「つぐない」のジョー・ライト監督の新作「Hanna」で、タイトルロールを演じることも決定したばかり。「ジョーのことは大好きなので、すごく楽しみ」と笑顔をはじけさせるシアーシャ。作品選びは「やはり監督が大事だし、あとはキャラクター、ストーリーや脚本ね」と語るが、大好きというコメディにはまだ出演していない。
「コメディは難しいって言われているけど、やっぱり一番好きなジャンルだから是非やってみたい。私も普段から冗談を言うタイプ。人を笑わせるのが好きなのよ」
「ラブリーボーン」では、今年のブロードキャスト映画批評家協会賞で若手女優賞を受賞。メキメキと頭角を現し、ハリウッドでも将来が有望視されているだけに、コメディエンヌとしてのシアーシャをスクリーンで見る日は、そう遠くないかもしれない。