「己こそが神と信じる男の哀しさ」ゼア・ウィル・ビー・ブラッド マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
己こそが神と信じる男の哀しさ
この作品を観に行ったのはアカデミー賞を2個獲ったからではない。映像にILMが加担していたからだ。映画を選ぶきっかけなんてこんなものだ。
100年以上前の荒れた大地の広がりに、気の遠くなるような旋律が被さる導入部に圧倒される。
一鉱山師だったプレインビューが石油王にのし上がっていくのだが、演じるダニエル・デイ=ルイスの声音に惹かれる。資金を集めるための説明会での落ち着いた声。神をも畏れぬ怒りに燃えた声。彼にとっては、町の神父さえも民衆をそそのかし仕事の能率を下げる敵でしかない。彼の声音は神そのものだ。己こそが神なのだ。ラスト、「終わった」という一言がすべてを物語っている。
158分という時間を使って丁寧に描かれているが、唯一、プレインビューと息子との軋轢の部分が端折られている。
p.s. 80年前のボウリングの設備は興味深い。掘削のボーリングじゃなく、玉転がしのボウリングの方。
コメントする