テラビシアにかける橋 : 映画評論・批評
2008年1月15日更新
2008年1月26日より渋谷東急ほかにてロードショー
現実と向き合うための、地に足の着いた物語
宣伝文句やビジュアルから「ナルニア国物語」のような、異世界での冒険を描いたCG満載のファンタジーだと思ったら大間違い。これは誰もがきっと感じたことのある、子供時代の心の痛みと素晴らしい友情、現実と闘いながら成長していく力を描く、地に足の着いた物語。もちろん、ファンタジーの要素はある。が、ここで描かれるのは異世界そのものではなく、つらい現実を乗り越えさせてくれる「想像力」そのもののパワーなのである。
フラストレーションをため込んだ少年ジェスの毎日は、個性的な転校生の少女、レスリーとの出会いで輝き始める。はみ出し者同士の2人は、森の中に空想上の王国「テラビシア」を築くのだ。この国は、ただの逃げ場ではない。ここは2人にとって、現実と向き合うためのレッスンの場ともなる。
やがて、悲劇が訪れる。きっと涙があふれ、止まらなくなるだろう。でも、この映画には「お涙頂戴」的なわざとらしい演出はない。観客はただ、2人の子役(妹役も忘れられない)の生き生きとした演技にこそ泣かされるはず。原作の繊細な持ち味を大切にしようとする作り手の誠実さが、心震わす感動へと見事に結実している。
(若林ゆり)