「スピリチュアル・ロードムービー(?)」ダージリン急行 Chemyさんの映画レビュー(感想・評価)
スピリチュアル・ロードムービー(?)
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マーク・ジェイコブスのスーツケースを大量に抱えた3兄弟のスピリチュアル・ロードムービー(?)。父親の死をきっかけに疎遠になった3兄弟が、インド旅行において絆を取り戻そうとする。この3人のすっとぼけた感じが実に良い。並んで座っているだけでその佇まいに「フフッ」と笑ってしまう。この旅を「スピリチュアル」なものにするため、3人は不思議の国インドで、祈りをささげ、愛を味わい、命を助け、死に直面する。そうして、てんでバラバラだった3人はいつしか絆を強めていくのだ。思想的なテーマが潜んではいるが、本作はオフビートな笑いに包まれている。前述のスーツケースを始めとする、エスニックでキュートな小道具、脇役にいたるまで個性豊かな登場人物、何より“ダージリン急行”の列車そのものがポップでキュートだ。3人の珍道中は、兄弟間のぶつかり合いから、異国(異宗教)におけるカルチャー・ギャップ等々を打ち破り、まさにスピリチュアルなコミュニケーションを形成して行く。父(権力、財力)の象徴であるスーツケースを投げ捨てて列車に飛び乗るラストシーンは、呪縛から解き放たれた兄弟の新しい希望に満ち爽やかだ。
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