「女の美への執念」おろち masakoさんの映画レビュー(感想・評価)
女の美への執念
昭和25年という時代設定なので、なんかちょっと古めかしい感じです。そして”おろち”は生身の人間の姿をしているけれども、人間ではない。ただの傍観者。谷村美月は死にぞこないの青 でも人間ではない役をやっていましたが、今回もまさに、です。そしてそのおろちがストーリーテラーにもなっています。
29歳を過ぎたころから顔や手に現れ始める痣、ですが、痣というよりなんだかタコの吸盤みたいな感じで気持ち悪いです。こんなのが顔に出てきたら確かに怖い・・・。しかし門前家の女は必ずそうやって美貌が崩れ化け物のように朽ち果てていく運命にあり、逃れることはできない。
階上の開けてはいけない部屋。そこには醜く変わってしまった母が閉じ込められていた。”それ”が始まったら最後、門前家の女はその部屋に入れられる。
美しい娘二人、一草と理沙。一草は母・葵の生き写しかのように葵そっくりに育ち、母と同じように女優となった。一方理沙は母の世話をしながら姉・一草を支えるように生きていた。そして葵が死ぬ間際、理沙にある重大な事実を告げる。
これは美しくありたいと願う女の美に対する執着心が起こす悲劇でもあります。ともかく理沙が母親に告げられた重大な事実を一草に告げてからの姉妹のバトル、というか、一草の暴行がすごすぎる。妹の理沙に対して、殴るは、蹴るは、髪は引っ張って引きずるは、物は投げるは・・・。よくそこまで出来るもんだとある意味感心。そしてそれに耐えている理沙が健気なようでもあり、怖くもあり。
確かに祖母や母を見て、自分もああなってしまう運命にあると知っているからこそ、その恐怖と戦わなくてはいけないのはわかる。女だったら誰だってあんな醜い姿にはなりたくないから。だけどそれは誰のせいでもない、彼女達の運命。それを人に当たるというのはお門違いなんですけどね。でも仲間がいれば許せるけど自分だけというのはやっぱり許せないものなのでしょうか。それは嫉妬であり、妬みであり、美への執着であり、執念であり・・・。だけど醜くなったのはその姿よりもその心だったように思います。
つくづく女って怖っと思いましたね。正直ラストへの展開は予想できましたけど、だからこそ本当女は怖い。はっきり言ってこの姉妹、本当狂ってます。相手のことを考える余裕なんてゼロ。自分が一番かわいい。自分が一番大事。あー怖っ。
そんな姉妹を木村佳乃と中越典子が見事に演じてます。ただ谷村美月の”おろち”の存在がなんだか中途半端だったように思いました。目覚めた時に佳子になってたのもちょっとよくわからなかったし。
山本太郎はかなり微妙な感じでした。もっと違う俳優を起用できなかったのかなぁ??女性陣3人がなかなかはまっていただけに残念な感じでした。