劇場公開日 2008年4月18日

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「それぞれの思惑で「為すべきこと」をしようとするも、他の者へは思いが至らない・・・観客にも?」大いなる陰謀 ジョルジュ・トーニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0それぞれの思惑で「為すべきこと」をしようとするも、他の者へは思いが至らない・・・観客にも?

<ストーリー>
ジャーナリストのジャニーンは、かつて自身が記事で賞賛した共和党上院議員、アーヴィングに独占インタビューを許される。彼はテロ戦争の状況を打開するための、新しい戦略について話し始める。

大学教授のマレーは最近出席率の低い、ゼミの学生トッドを呼び出す。成績優秀な彼に、教授は同じように成績優秀だったが、志願兵となった二人の学生の話をする。

アフガニスタンでの新戦略に参加することになった、マレーの教え子、アーネストとアリアン。ヘリで目的地へと向かうが、伝えられてた情報とは違い・・・

<個人的戯言>
政治家、ジャーナリスト、教授、学生、兵士という、それぞれの視点から見た、「為すべきこと」の意味。それぞれの思惑の中で、物事は動き出してしまいます。しかしこの関係性が、ざっくりした背景等は示されていて、表面的には理解出来ても、心理面での繋がりを明確には見つけられませんでした。それぞれの背景に関して、時間的にも説明する時間が足りなかった気がします。

それぞれの立場により、その思惑には様々なものを抱えているものの、「事」に立ち向かおうとしている姿勢は共通する部分でもあります。

・テロ戦争への逆風の中、今新しい戦略に打って出て、更にジャーナリストにリークする政治家
・かつて持ち上げてしまった政治家の独占インタビューを許されるも、自分の考えと立場に揺れるジャーナリスト
・かつて自身もベトナム戦争を経験し、行動を起こすように学生に説いたものの、戦地に向かう学生が出てきて戸惑う教授
・人種的境遇と若い純粋な思いゆえ、志願兵となることにした二人の学生
・かつては論戦にも参加していたが、今は無気力になっている現役の学生

しかしそれぞれの行動は、一連の流れの中で「為すべきこと」に繋がるのか。流れは観ればわかりますが、そこまで辿り着く「思い」は、5つの立場の細かい背景まで描かれてはいませんでした。特によくわからないのは、志願した学生の思い。確かに人種的境遇は志願する上で大きな意味を持っていたでしょうが、志願を決める前に行われたゼミでの研究発表は、若さゆえと許せる範囲ではない稚拙さが目立ち、本当にそんな考えで志願してしまうのか疑ってしまいます。

それぞれの背景の深いところでの繋がりが明確になれば、よりその関係性の深さを感じることが出来たでしょうが、時間的に厳しかったのも事実です。ちょっとテーマが広範囲になり過ぎたかも。現役の学生と教授の論戦が、最も大きなテーマを炙り出し、最もスリリングだったのですが、それを中心に据えるのは、

・映画の内容的にも(それで映画は作れない・・・)、
・「大人の事情」的にも(メリル・ストリープとトム・クルーズを脇には持ってこれませんものね・・・)

無理ですし・・・全体像を描くのが難しいテーマでした。

ジョルジュ・トーニオ