「80年代後半のアメリカ。最も嫌いだった時代のアメリカだったはずが・・・」RENT/レント mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)
80年代後半のアメリカ。最も嫌いだった時代のアメリカだったはずが・・・
山本耕史の舞台の原点となったこのブロードウェイミュージカルに興味を持ったのが切っ掛けで見る事となった不思議な縁の作品。正直80年代のアメリカンロックに全くの共鳴を持たない自分としては見始めは苦痛でしかなかった。がしかし、言わずと知れた庵野秀明の🎥シン・ウルトラマンでメフィラス星人を怪演したことで、注目することになったこの俳優・山本耕史が、レ・ミゼラブルオタクであり、ミュージカルへの強烈な嗜好性を示していることを、TV番組『人生最高レストラン』に出演した際に知り、最も嫌いな時代のNYを描いたブロードウェイミュージカルを原作に持つ本作品への興味と繋がったことは、返す返すも庵野秀明監督に感謝である。
ウォーホルが死に、バスキアが死に、キースヘリング迄死に絶えて、ストリートアートが今ほどオシャレとは言えず、30年後にヒップホップをBGMにブレイキンやスノボ・パークがオリンピックに取り込まれるなんて想像すらできなかったあの時代に、エイズが流行り、今で言うLGBTQが解き放たれ、麻薬とホームレスと荒れたサブウェイに象徴されたNYはどんな海外経験の豊富な旅人たちも行ってはいけない都市の代名詞だったわけだが、そこでも実は新たなカルチャーの胎動が起こっていたことを、まさにコンテンポラリーな若者たちの苦悩として描いたこの作品は、最後まで見て傑作であった事を強烈に知らしめられた。今見ても自分史的には、この当時アジアやヨーロッパに興味をスライドしてた時代であり、30年後の今に最先端のカルチャーとして熟成することを想像することすら出来なかった自らの感性に改めて失望させられた作品でもあったわけだが。遅ればせとは言え、今この作品に出合い、16歳でデビューした宇多田ヒカルが歌うR&Bは当時のNYのポップカルチャーの死に絶えたエイズ禍に覆われた見過ごしていたNYのリアルを伝えていたのだと、今更ながら知りえた鈍感さに我が身に嫌気がさすが、こうして庵野秀明監督を通じた山本耕史と言う稀代の変態俳優との接点がなければ、ネトフリの📺地面師たちの好演にも出会えなかっただろうし、30年と言う流れを経て今初めて知るNYのライブ感をこの作品で知ることが出来たのは遅きに失したとはいえ幸運であったと言える。
この作品、改めてお薦めである。