「引っ張られる(※追記あり)」ラストデイズ 吹雪まんじゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
引っ張られる(※追記あり)
大槻ケンヂは若くして死んだカート・コバーンを「あいつはバカだ」と言っていた。神格化される彼の死を冷めた目で見ていた彼らしい見解である。そして大槻ケンヂは「生きていくだけだろ?」と歌い続ける。著書でも「死んだら伝説、狂えばカリスマ、生き残ったらただのおっさん。しかし、生きてる奴の勝ちだ。」と書いてある。なるほどと思う。
さて、カート・コバーンは私がロックにはまった時にはすでに亡くなっていました。なので特に思い入れはありませんし、なんならニルヴァーナの曲は「スメルズ…」と「リチウム」以外全く好きになれず、むしろ嫌いな部類の音楽でした。しかし、なぜか鬱の時は無性にニルヴァーナを聴きたくなる。ぶっちゃけ歌詞なんか聴いちゃいないのですが、不思議と「死」に引っ張られる音楽なのです。少なくとも私にとってはニルヴァーナ、カート・コバーンとはそんな存在でした。
鬱の時にだけ寄り添ってくれる(悪い意味で)変な音楽。なぜだろう?カート・コバーンの死が関係しているのだろうか?本作「ラストデイズ」を観れば何かわかるだろうか?……長々と書きましたが鑑賞動機はそんなとこです。
結果、観たことを少し後悔しています。ニルヴァーナの音楽同様、「死」に引っ張られる作品。せっかく最近ハッピーな感じだったのに勘弁してほしい(自分で勝手に観といて何言ってんすかね…)。ニルヴァーナを聴いて死を意識するやつなんて私しかいないかも知れませんが、本作における鬱々とした空気はなかなかきついです。
ストーリーらしいものは皆無、ひたすらカートをモデルにした主人公がダラダラと無気力にフラフラしているばかり。唯一、弾き語りで叫ぶシーンは胸にくるものがありました。
「生きていくだけだろ?」確かにそうなんだけど、それがなかなか難しい。本作ではその生きる難しさはあまり伝わって来ませんでした。ただただ死に引っ張られていく、まさに「ラストデイズ」の様子が淡々と描かれているのみでした。
※追記
レビュー投稿した後に、初めて歌詞の和訳を読んでみたのだが、めっちゃ暗い。びっくり。学生の頃、周りでニルヴァーナを聴いていた奴らはみんなパリピみたいな奴らばっかりだったから不思議。彼らはニルヴァーナの音楽を本当に聴いていたのだろうか?おしゃれ感覚で聴いていた…というより「ニルヴァーナを聴いている自分かっこいい」と思っていただけなのではなかろうか…。まぁ、歌詞も読まずに嫌いとか言ってた私も大概だが。
※追記2
本作を視聴してからずっと「引っ張られて」いる。淡々とし過ぎてつまらない作品だが、それだけのパワーがあるということ。落ち込んでいるときに観たらやばかったかも。少し加点。