劇場公開日 1951年5月26日

「ウォルト・ディズニーの理想とした世界。」バンビ コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ウォルト・ディズニーの理想とした世界。

2024年4月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

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 内容は、子鹿のバンビの成長譚。動物の成長を通じて人間の一生と重ね、それぞれの経験に思い出させると共に、人である事の恐ろしさも知る事になる素晴らしい娯楽映画。
 印象的な台詞は、『愛は終らない歌。人生は一瞬で過ぎ去る・・』冒頭の歌の歌詞が切なく響く。子供の頃は何も感じず楽しさだけで見えた頃が嘘の様に感じる変化は面白い。
 印象的な場面は、この映画の山場で人間が山を焼きに来る所だと感じます。人間の愚かさや当時の第二次世界大戦が色濃く感じられます。暗く赤く焼けた山々が痛々しさを余計に加速させます。この時の怖さの演出は流石だなと当時の技術の才を集めた芸術性を感じます。
 印象的な立場は、人間に使われる獰猛な猟犬の群れと姿の見えない当事者である人間の立場の比較です。確実に居るのに姿は見えない。正に戦争そのものの表現が凄いです。
 ディズニー作品の完成させる片鱗を見せる作品。音楽と映像のコラボレーションが素晴らしい。手塚治虫がこよなく愛したアニメでもあり娯楽性がここぞとばかり散りばめられた素晴らしい構成です。子供にも大人にも深く刺さるこの作品は、綜合芸術と呼べる物だと感じる。4本足動物の滑らかな描写。動作による性格の表現。明暗対比による観客の心情の誘導。音楽と映像での没入感。手本と言われるのも頷けます。少し教育的で恥ずかしくもありますが伝えたい事が明確に伝える事の出来たのは素晴らしい映像と音があるからだと感じます。
 最後は、映画の文法に違う事なく歴史は繰り返すで、バンビの成長譚を締めくくるあたりはカタルシスを感じて爽快感いっぱいで当時の人は劇場を後にする事が出来たでしょう。現代では、ジャングル大帝の様でもありライオンキングの様でもありもののけ姫の様でもある。自然と人間を主題とした時代性を感じさせない素晴らしい映像作品です。

コバヤシマル