受取人不明のレビュー・感想・評価
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逃げ場などはじめからどこにもない
延々と広がる貧相な田園風景と、それを囲繞する米軍基地。冒頭から異様なまでの閉塞感がスクリーンを覆い尽くす。どこへも行けないことをあらかじめ運命づけられた人々は衝動的に暴力を振るったり過去の栄光に浸ったりすることでひとときの慰めを得る。3人の若者たちはそうした阿片中毒患者のような生き様からは意図的に距離を置こうとする。絵を描いたり子犬と戯れたり上司の理不尽に抵抗したり、各々が各々のやり方で村を覆い尽くす不吉な重力から逃れようともがく。しかし彼らの抵抗をあざ笑うかのように、より強大な暴力と貧困が彼らの足を絡め取る。米兵との混血児であるチャングクは、帰らぬ夫を待ち続ける母親のもとを去り自ら命を絶つ。米兵の計らいで右目の視力を取り戻したウノクは彼の前でもう一度右目を潰す。ウノクに密かな恋心を寄せるチフムは彼女と密通する米兵を矢で射抜き監獄へ送られる。どこにも逃げ場はない。それが70年代の韓国という空間なのだ。
やっと届いた手紙に受取人なしか
キム・ギドクの初期の作品。
舞台は1970年代の米軍基地のとある村。
始終、重苦しい空気が流れ、貧困村の救いようのないシーンに飲み込まれていき、「多少でも何か希望があるのでは?」と進みながらも、最後まで希みなく終焉。
ある紹介文に「キム・ギドクの最も自伝的な作品である」とありましたが、普通は絶対に他人に語りたがらないだろう闇の部分を臨場感たっぷりに「とことん表現してやろう!」と思いながら作ったのではないかと。
途中、犬がさばかれるシーン(直接的には映してはいない)などは、ちょっと辛いですが、「動物の安全を確保して撮影している」というテロップを思いだし「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言い聞かせながら観ました。
話はそれますが、最近、ある民俗学系の書籍で「昭和30年〜40年頃、日本でも犬を殺し犬肉を販売していた<犬飼い>が宇都宮のある地域に実際に存在した・・・一頭300円〜500円だった」という事実を知り、大きな衝撃を受けたところです。😱 この映画の犬肉を売って商売していたのは紛れもなく事実だったんだろうなあと思いました。
それにしても、途中、三人が「片眼」で歩くシーンがありますが、あれはギドク独特の世界ですよね。(『絶対の愛』でも、そんなギドクワールドがあったような)
韓国女性の群像劇
IMF通貨危機以前の韓国を描かせたらキム・ギドクに勝る監督は居ない。時には変態扱いされることのある極端な表現があるがそれは韓国と国を知らぬ無知なるものの誤解であって、韓国そのものが強烈に追い込まれ正常から乖離した国であった証である。そこで犠牲になるのは弱者である女性だが女性は男にはおよそ許されぬ立ち振る舞いを取る事で辛うじて正常を保ち、未来に子を残そうとする。そこを美しく彩られた女性の翳をもって表現しようとするキム・ギドクの映像美学は秀逸である。
皆、破滅へと進む
それぞれの人物に感情移入も出来ず寧ろ嫌悪感を抱く役柄ばかりで滅入る。
ヒステリー気味なハーフの母親は近所に迷惑ばかり掛けて最後まで意味不明な行動を息子の最期も笑っちゃうギャグでしかない描写。
キム・ギドク節の変態描写は相変わらず健在だがイライラしかしない登場人物の数々に腹が立つ。
あまりにもお粗末な群像劇。
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