「ピアノマン騒動もようやく収束し、実は彼はピアノが弾けないことがわかった。もちろん、ダニエル・ブリュールも本当は弾けない・・・」ラヴェンダーの咲く庭で kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ピアノマン騒動もようやく収束し、実は彼はピアノが弾けないことがわかった。もちろん、ダニエル・ブリュールも本当は弾けない・・・
こんなにタイミングよく映画が公開されてるとは露知らず、ピアノマンに関しても、第二の若人あきら(我修院達也)くらいにしか考えていなかったものだ。そんなこんなで、また記憶喪失の映画なんだろうなぁ~と単純に予想していたら、大間違いだった。2人の大物女優、マギー・スミスはアカデミー賞候補6回(内2度受賞)、ジュディ・デンチはアカデミー賞候補4回(内1回受賞)という輝かしい受賞歴と実力の持ち主。この2人に手厚く看護されるポーランド人青年アンドレア(ブリュール)は、次第に英語を覚え、ヴァイオリンの才能も認められていくストーリー。
歳をとっても淡い恋心を抱くアーシュラ(デンチ)の演技には、とにかく心を揺さぶられる。そんな恋心などには全く感知できないほど純粋無垢な青年と、彼の前にドイツ語で話しかけてくるオルガ(ナターシャ・マケルホーン)が登場。彼女もまた謎めいた魅力を秘めていて素晴らしかった。こうして主軸の3人に1人の女性が中心になるのですが、オルガに恋してしまう医者やヴァイオリン(フィドル)を青年にあげてしまうアダムの存在にも感情移入させられるほど、細かな人物設定が秀逸です。町のバーや祭のときに必ず活躍するフィドル弾きアダム。ひょっとすると、自他ともに認める天才フィドル弾きだったかもしれません。「俺より上手い奴がいるのか・・・」と感じたに違いありません・・・
あらすじを読むと大体の時代背景がわかるのですが、全く予習せずに観ると、最初は全くわからず、徐々に時代が大戦前夜だということがわかってきます(小出しに出てくる用語は、ロカルノ条約、徴兵、宣戦、スパイ等々)。さらに青年はポーランド人。ナチに迫害されたピアニストの映画『戦場のピアニスト』を思い出してしまうほどです。また、姉妹の過去や現在の家族構成についても、徐々にわかってくる仕掛が施され、物語に集中させられました。
最も印象に残ったシーンは、姉妹で青年の髪を刈った後、アーシュラがそっと切った髪を拾う場面です。ここで終盤の展開を予想させられ、熱いものがこみあげてきました。
【2005年8月映画館にて】