菊花の香り 世界でいちばん愛されたひと
劇場公開日:2004年10月16日
解説
アジアでベストセラーとなったキム・ハイン著『菊花の香り』を、「シルミド」の脚本家キム・ヒジェが脚色。大学時代の先輩/後輩の関係にあった男女が紆余曲折を経てむすばれるが、不治の病に引き裂かれる悲しいラブストーリー。出演は、「反則王」のチャン・ジニョンと「殺人の追憶」のパク・ヘイル。
2003年製作/109分/韓国
原題または英題:Scent of Love
配給:タキコーポレーション=リベロ
劇場公開日:2004年10月16日
ストーリー
大学新入生のイナ(パク・ヘイル)は、ある日、地下鉄で妊婦をかばって口論する若い女性、ヒジェ(チャン・ジニョン)を見かける。すれ違いざま、彼女の髪からさわやかな菊の香りを感じてイナの心はときめく。歴史研究会のサークルで、彼は、ヒジェと再会し胸躍らせる。きつい言葉もポンポン吐き、自信に満ちたヒジェはサークルの会長であり、イナの先輩にあたる学生だった。夏のある日、合宿の集合時間に、イナは遅刻する。船着場でイナを待っていてくれたのは、ヒジェだった。イナの足に、彼女の蹴りが入る。憧れのヒジェとふたりきり、船上で金色に輝く空と海を見つめるイナは幸せだった。島の海で、溺れかけたヒジェを助け、愛を告白するイナ。ヒジェは、20歳のイナの一途な想いを冗談に紛らわし、彼の腹にパンチを見舞う。思わず唇を奪うイナだったが、恋人がいるヒジェはきつい言葉ではね除けた。「本当の愛は、相手の人生まで背負うことよ」。ヒジェは卒業後、デザイナーとして活躍し、恋人と婚約する。彼女を忘れようと苦しむイナが兵役につき、厳しい訓練を受けている頃、ヒジェを突然の不幸が襲う。交通事故で婚約者と両親を失い、自身もやっと生き残るほどの大怪我をしたのだ。兵役から戻り、ラジオ番組のプロデューサーとなったイナは、ヒジェへの想いを、リスナーからの葉書という形で偽り、毎週ラジオで流す。そんなある日、イナはヒジェの親友でサークルの先輩のジョンナン(ソン・ソンミ)から、ヒジェと直接向き合うよう背中を押される。ヒジェにどう思われようと変わらぬ愛をぶつけ、長い間失ったままの彼女の笑顔を取り戻すために、自分ができることは何でもしようとイナは決意する。生きる意欲をなくし、食事もとらないというヒジェの家の前に、彼女の好きなヨーグルトを積み上げるイナ。「何故私を愛してるの?」と聞くヒジェに、イナは「君だから。…君の命に感謝している」と答える。その言葉に、とうとう彼女の閉ざされた心は開く。結婚を反対していたイナの母が、「一途な夫に愛されるのは、辛いことだし、幸せなことよ」という言葉で、ついに祝福してくれたとき、イナとヒジェの頬には、涙が光っていた。あの島の夏の日から7年の年月がたっていた。幸せな結婚生活が始まった。ヒジェが初めて声を出して笑ったとき、イナは感動のあまり涙を流す。3年後、ヒジェが妊娠した。イナの優しさに拍車がかかる。産科医となっていたジョンナンも、ヒジェに訪れた幸せを、自分のことのように喜ぶ。そんな冬の日、ラジオ番組にペンネーム「紙の国」という女性からはがきが届く。それは、胃ガンで余命数ヶ月と宣告された妊婦が、病気を夫には告げずに、子供を産もうと決意したという内容だった。「まだ見ぬ子供のために妻の命を諦める夫はいない。勝手に産むことを選択するなんて、夫に対して思いやりがなさすぎるよ」と怒るイナと、「でもこの女性の心はわかるわ」と語るヒジェ。二人の気持ちが、初めてすれ違う。あまりにもつわりが激しいヒジェの様子を心配していたイナは、ある日、「紙の国」の文面に、ハッとする。「大好きだった夫のコロンの香り、その夫の匂いが、病気のせいで苦手になってきて、とても心がつらい」という内容。今朝、イナのコロンを、さり気なく避けたヒジェ…。「紙の国」はヒジェだったのか?! 診察室に飛び込んできたイナの目を見て、ジョンナンは彼が全てを知ってしまったことを悟る。「ヒジェには知らないことにしていて。それが彼女の望みよ」ヒジェの親友であり、イナのこともずっと好きだったジョンナンの瞳から、苦悩の涙があふれる。地面に崩れ落ち、ひとり号泣するイナがいた。イナとヒジェの、病気に気づかぬふりをした、深い愛に満ちた生活が始まった。相手の苦しみや哀しみを思い、互いに隠れて声を殺して泣く二人。二人の命が吹き込まれた胎内の赤ん坊を守りきるために、ガンの治療を拒否し、何があっても残された時間を生き抜こうとするヒジェの壮絶な決心を、イナは、苦しくとも何も言わずに受け入れようとしていた。彼は休暇を取り、残されたときを思い出の島で二人だけで過ごすことを決意するが……。