「かなり好き」箪笥/たんす toukyoutonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
かなり好き
ホラーの演出がいい!カーテンから生えている足、シンク下の女の子、どれもこれもゾワッとする演出。目をつぶればハッと消えてる幽霊、そんな幽霊ではなくシーンが切り替わってもそこに居る姿にこちらも冷や汗が出そうになる。
思わず背後を確認してしまった。
主人公が精神を患っていると終盤で明かされるので、幻覚と現実が入り混じりどれとどれが本当に起こっているのか混乱したけど、切なくて怖くて良い映画だった。
「最愛の妹」というフレーズがぴったりの映画だ。
登場する継母と妹のシーンはほぼ主人公である姉スミから生み出された人物なので、それを踏まえて見るとまた味わい深い。
●「ごめんね、聞こえなかったの」
ちょくちょく「聞こえなかった」と登場する印象的な台詞。真実を知るととても切ない。
姉の後悔と苦しみがこの一言に収められている。
母が精神を病んで屋敷で療養する中、実質継母の立場で家の実権を握り、家事を切り盛りする姿は、子供にとってキツイだろうな。
実母が箪笥で首を吊って自殺し、それを見た妹がパニックを起こして箪笥が倒れる。
箪笥の下敷きになった人間がいるのを目撃した継母は他の人に知らせようと部屋を出るが、途中出くわした仲の良くない継子の姉になじられ、「後悔することになる」とあてつけで箪笥を放置。姉は妹が、母の死体と一緒に箪笥に潰されているのを知らないまま、外に出てしまう。
箪笥が倒れた音は継母も姉も聞いたが、最初に見に行ったのが継母で、姉も見に行こうとした時に継母と出くわして見に行くのをやめてしまった。
というのが不幸の経緯。
その経緯の元思い起こされる「聞こえなかった」という台詞が切ない。「あの時気付いていれば」という後悔を持ち、罪悪感に苦しみながら幻覚と妄想の中生き続けるのが姉スミなのだ。
●ホラーテイスト
事態を知った姉は精神を病んで、母と同じ屋敷で父親同居のもと療養を始めるが、自分を継母と思ったり、存在しない妹の幻覚を見ている。なので継母の姿で行われる化粧や下着姿で寝室で夫を待つ姿には近親相姦的な嫌悪感が見ている側に湧く。
実際起きた怪奇現象は終盤の母/妹の幽霊が継母に復讐した部分だろうと思う。
ラストは姉の屋敷での療養が上手く行かず、再び入院。屋敷に戻った継母が祟り殺された。
演出はこれまで以上に幽霊の姿がはっきりと「足」という形で示されて怖い。不幸の象徴の箪笥がおぞましくて良かった。
(姉スミの寝室で見た幽霊はあれは母親なのだろ
うか、妹単体のときに起きた「誰かが部屋に入ってきた」という出来事も相まって姉スミの妄想の一種なのか迷う。)