「大人は平気で嘘をつく?」ウォルター少年と、夏の休日 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
大人は平気で嘘をつく?
感受性の豊かな時期にどんな大人に出会うかはその後の生き方に大きな影響を与えるでしょう。
少年と爺さんたちが冒険の旅に出る話かと思ったら、爺さんたちが語る昔の冒険談、少年は只管聞き役でした。
財産目当ての浅ましい母親や親戚が出てくる苦い現実と爺さんたちのフィクションのような華麗な生き方の対比を描きながら、ハブ爺さん(ロバート・デュバル)がウォルター少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント)に大人への心得を語ります。このセリフが監督が映画で語りたかったエッセンスでしょう。
母親の嘘に辟易なウォルターは大人に疑心暗鬼、「アフリカの話は本当なの?」と訊くウォルターにハブは「本当かどうかは関係ない、何かを信じたいと思ったら信じることだ。時として曖昧で嘘くさくても信じるべきことはある、例えば人間の良心、誇り高くて勇敢であることの素晴らしさ、金や権力など何の意味もないこと、善は悪に勝つと言う道理、真実の愛は決して滅びない、大事なのはそれが本当かどうかではなくそうだと信じて生きてゆくこと、それこそが人間の素晴らしさだ・・」
年寄がまともに人生哲学を語っても退屈な話と流されかねないので本作のような奇妙なシチュエーションを考えたのでしょう。
映画はシニカルなコメディタッチ、子供たちに受けるには動物も必要、ワンコから豚さん、ライオンまで出てきます。原題のSecondhand Lionsはセコハンのライオン、年老いて動物園をお払い箱になったライオンと爺さんたちをだぶらせているのでしょう。年寄といっていますがどう見ても子供のライオンにしか見えませんでしたが成獣は危険なので致し方ありませんね。ライオンは命を救ってくれたウォルターになつき、ウォルターが探偵に襲われた時身を挺してかばって死んでしまいます。最後は百獣の王として立派な死だったと皆が讃えました。これも誇り高く死ぬという爺さんたちの無鉄砲な最期と被ります。
アフリカ時代の宿敵の孫が葬儀に来るシーンは試写後に加えられたそうです。これで爺さんたちの昔話が本当だったと裏付けられました。ほんとうかどうかは関係ないと言っていたのにやっぱり監督は嘘に思われたくなかたのでしょう。