オアシス(2002)のレビュー・感想・評価
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世界は砂漠
役者さんの力が凄すぎる……
二人のことがいつのまにか好きになっていますね。「主人公に魅力はない」どころかその反対です。
この二人だけにしかわからないことがあり、それはもう、他の人間にわかってもらう必要はないし、わかってもらいたいとも思わない、そういう潔さを感じました。
クッッソなのは世界のほうだからね。
ただ一点、彼が逮捕されるのは彼自身が彼女の部屋の鍵を勝手に開けて押し入って羽交締めにして服を……という、あの罪の報いが遅れてきただけ。
しかし、その時には皮肉にも二人の関係はその時とまったく違っていて……というままならなさ。
部屋を掃除する彼女の一人の姿が心に残ります。素晴らしいラスト。
とてもよかった
脳性麻痺の彼女と引き離されて切ないラストを迎えるのだけど、二人の恋が長く続いて倦怠が訪れたらどのような展開を迎えるのかと考えながら見ていて、もしかしたらそっちの方が残酷な結末だったかもしれない。
花送られて?
家押し入ってきて、凌辱された男に花贈られたくらいで気を許しますかね。かわいいって言われたくらいで、足舐められた男でっせ。無理あるでしょう、憎いし屈辱的だし、恐ろしいでしょう。
身障者の方が選んだ男がこんな男という設定は、
ピュアというよりイージーだし公平じゃないし、
ただお互いが孤独であるという以外に結びつきがない。
レイプされてもオーケーなくらい、相手選べないのは悲しすぎるでしょう。
少なくともこの映画内では多くの相手を選べない身障者の方の立場につけ込んだコミュニケーションと捉えられ、
恋愛を舐めてるような気もします。
ただ、役者がいい。モチーフの木の枝もいい。高速道路のお姫様抱っこも浮かれた至福の様子が伝わってくるし、演出に嫌味もない。部屋でインドの踊りに囲まれてのキスシーンも良かった。時々妄想の健常者としてのシーンも挟み込まれてあれはかなり切なかったです。
魅入るところはたくさんあり、
舞台設定だけどうかなという疑問をおいておけば、
良い映画だったと思います。
恐ろしい純愛だ
イチャンドン監督が一気に好きになる映画でした。
本当にこの作品に関わったすべての人が、一生食うに困らないお金をもらってほしいと思うくらいいい映画でした。
ラストが感傷的過ぎないのも、素敵で。
まだ続くよって感じで終わって本当よかったです。
あれで、バッドエンドだったら立ち直れないです。
高速道路のシーン、オアシスの住人が絵から飛び出してきて踊るシーン、駅のホーム、駐車場での喧嘩、すべてが美しかった。
どんな映画にも、いいシーンは必ずあると言った人がいたけれども、この映画はもうそんなシーンしかなかったですな。
これが愛だ、と納得のいく作品でした。
イ・チャンドン
障害のない健常者としての姿が現れるいくつかのシーンは、自分自身にある憧れが顕在化したものだとしたら、それはなにも障害のあるなしに関わらず、おれもおんなじだ!と感じた。電車で目の前にカップルが座って仲良くしてたりしたら、憧れの目で見ちゃうし、おれもあんな風にカッコよく振る舞えたらなーってクラスの人気者見て思ったりしたし。それと本質的には同じだと感じた。
最後の木とラジオのシーンは本当良かったけど、壁に木の影が揺れてるのが怖いってゆうのがずっとあったから、ラストは、そこに必死に木を切る男の影が写ったりしても良かったのかなーって思った。「ONE PIECE」の空島のラストみたいに。
印象的で好きなショットはバーニングの方が多かったけど、ロミオとジュリエット的な恋愛映画で初めてちゃんと切なく感じられたくらいに、ストーリーが好き。
ミラクルはないと思ったが
ペパミントキャンディと、オアシス、どちらを見るか迷いペパミントを見たが、正直よくわからずイライラ感のみ積もりどうしてそうなん?もっと普通に行けたんじゃない?というもやもやがずっと充満。オアシスは設定からどうにもならない感満載だったので鑑賞が後回しとなったが、本作の2人はどうにもならないことをどうにもならないとは思わず真摯に自分や欲望を出しきっていて、あらすじの印象とはまるで違うものだった。2人の演技力凄まじくもはや魂そのもの。監督と主役2人は本当に伝えたいことがある時その者のみが表出できる表現力である。恋愛映画で普通に起こるお手軽なミラクル、奇跡はないのだ、牧師さまが祈っても、どんなに楽しい時間を過ごしても、ミラクルはない、重すぎる現実、と思いまた前半の性暴力や兄の身代わりなどの伏線引っ掛かり歯痒い思いで見ていたが最後にインドの踊り子子ども象と踊った時の花びらのようにホコリが美しい花のように舞う部屋の彼女を見て、甘美な感傷とは全く別次元のミラクルを感じた。
コンジュ以外は受け入れられない。
主人公のジョンドゥはペパーミントキャンディーの主人公と中の人が同じです。
中の人(ソルギョングさん)、凄いです。このふり幅…いやーびっくりしました。
ヒロインのコンジュちゃんも、ペパーミントキャンディーのユンスニムさんと中の人が同じです。こちらの中の人(ムンソリさん)も、凄い…すごかったです。
役者の確かな力量を感じる作品でした。
映画の内容は、人の世はクソゲーなんですねという悲しい話でした。
私はコンジュちゃん以外の登場人物を受け入れることができませんでした。
ジョンドゥは、現在(2019年)であれば自閉症か発達障害かの診断がつく感じに見えます。wikiによる解説では社会不適合者と書かれていますが、自己責任でダメな人というよりは、明らかに特別な支援が必要な人に見えます。
なので、言動への一定の同情(のようなもの)は感じます。
が、
コンジュちゃんに性的暴行をしたでしょう。兄夫婦に踏み込まれた時ではなく、まだ仲良くなる前に性的暴行をしたでしょう。あれが許せないのですよ。
その後の交流がいくらほほえましくっても、私は受け入れられない。
ですのでジョンドゥに対して、平らかな気持ちでは見られなかったです。
ジョンドゥ兄(と弟)とコンジュ兄夫婦は、もっと許せないです。死んでもらいたいです。
コンジュ兄夫婦は、きれいな障害者向け住宅に、障害者であるコンジュを連れて行かず夫婦だけで暮らしているくそヤローどもです。
査察の時だけコンジュを連れてきて、あとはボロアパートに閉じ込め、
隣のあんまりちゃんとしてなさそうな夫婦に世話を任せてさ(月額20万ウォンって安すぎね?)。なんだあれ。
そして、コンジュちゃんがジョンドゥと同意の上でセックスをしてたときに
兄夫婦が訪ねてきてしまってレイプと勘違いしてジョンドゥは逮捕されますが、金払えば許しますよってジョンドゥの兄弟にゆってましたなあ。
ゲスだゲス!六道の外へ行ってしまえ!この上更に妹を金づるにする気か!この(お好みの罵り語をどうぞ)!!!!!!
という感じで、頭の血管が切れそうでした。
ジョンドゥ兄(と弟)は、ジョンドゥがこういう人だから、いろいろ大変なんかな。それにしたって冷たいし、だいたい出所後に迎えにもいかず、新しい住所も教えてあげてなくって、冬服も差し入れしてあげへんって、冷たいよな母を含め、なんて思ってたら。思ってたら!!!
なんと冒頭の出所の原因は、兄の!兄の!!兄の!!!
起こした事故の替え玉としてジョンドゥが逮捕されて、服役していた時の出所だったということがわかるんですねー。ぶったまげました。
ジョンドゥから替え玉を申し出たとのことですが、それにしたって。
自分の過失致死を代わりに背負ってもらって、この感じですか?
あー理解できん。兄きっもいわー。弟もきっもいわー。
とこちらも反吐がでそうでした。
よってコンジュちゃんの美しさのみを心の支えに見続けたわけですが、
なんとコンジュちゃんは前述の通り、性的暴行を加えてきたジョンドゥと何でか仲良くなり、恋人同士になるんですね。そして、ジョンドゥと同意の上でセックスをした(なんならコンジュちゃんが誘った)現場に、兄夫婦が突然やってきたんですね(誕生日だった?)。
初めてと思われるセックスにもそれなりにビビっていただろうし、その最中に他人に踏み込まれるし、恋人は犯罪者扱いされるし、でもびっくりしすぎてコンジュちゃんは何も言えないし、だれも誰もだ・れ・も、二人が合意の上で、お互いにしたくてしていた可能性を考えてくれないし…
コンジュちゃんは渾身の力でひきつけ?発作?暴れた?何かわからないけどかなり異様な勢いで咆哮します。
もうなんか、こんな世界には生きていたくないと私は絶望しました。
ラストは、警察署から逃げたジョンドゥが、コンジュちゃんの家の外の木の枝を切って、コンジュちゃんの部屋のタペストリー(オアシスと書かれている)に、怖い枝の影が映らない様に必死に枝を切り、部屋にいるコンジュちゃんはそれにこたえるよう、ラジオの音量を最大にして泣くというものでした。
コンジュちゃんは脳性麻痺で、完全に寝たきりではなく、自力で多少動けるし、話も調子が良ければ不明瞭ながら何とかできる、喜怒哀楽や知性はどうやら年齢にふさわしいくらいちゃんと育っている。ように私には見えました。
なので、兄夫婦のことどう思てたんかなとか、隣の夫婦のセックスの音を聞かされるのどう思てたんかなとか、最初のジョンドゥは怖かっただろうなとか、いろいろ思いました。
あと、脳性麻痺なしバージョンのコンジュちゃんを自分で想像しているシーンが幾つかあって、その想像が楽し気で、幸福感に満ちていて、現実世界のクソゲーさと非常にギャップがあって、より悲しみを強く感じました。
コンジュちゃんが映画の結末の後、どうやったら現実世界で楽し気に、幸福感に満ちた生活をできるだろうかと考えたけど、彼女の環境では、どうにも思いつかなくって、苦しいです。彼女が受けるべき公正さをどうすれば実現できるのでしょうか。
そして、この物語をどのように受け止めたらいいのかわからないです。
悪い作品だとは思いません。グロテスクなまでの強い個性が、世界や社会への疑問を薄れさせないという意味では、素晴らしい作品だと思います。
だけど、明日に希望を見出したいと常に願うわたしにとっては、その意欲が粉々に砕かれなかなか立ち上がれない感じで、再び見ようとはおそらく思わない作品でした。
FAIRY TAIL
童話のようなファンタジー作品である。勿論、社会問題を想起させる現実問題ではあるが、その両世界を見事にシームレスに行き来する演出には唸った。それはその難解な演出を高等テクニックで見事演じきった両主人公の力量に他ならない。あまり映画や文学に接さない人からすれば混乱を来す構成かもしれないが、どこからが現実でどこからがイマジネーションなのかを感じ取れる豊かな感情があればその大胆で際限がないシーンの数々に抵抗なく受容れると信じる。
冒頭の鏡の反射が鳩、又は蝶にイメージされる具体的効果は心を掴まされる。自閉症の娘とADHDを疑う男の、その余りにも無秩序かつ、制約されない美しさ、そして対する周りの人間達の社会的だが、どこか殺伐としてしかもそんな“妖精”達を利用している狡賢さが醜く露呈されていて、その対比の際立たせ方に目を見張る。初めは粗野でダメ男であったのが、実はその犯罪歴は兄弟達の身代わりであることが明るみになるにつけ、男への共感がグッと増す展開は素晴らしい。一見して反社会的行動と思える数々の行為が、実は二人にとって何も間違っていない統一感を以て世界を彩る。そして本作の極みは何と言ってもヒロインの自閉症とそうじゃない姿の変化を何の継ぎ目もなく見せる件だ。ヒロインのイマジネーションをこんなにも深く、そして悲しく、でも切なる願望を表現した方法は他に類を見ないのではないだろうか(探せばあるのだろうが)。
クライマックスでの枝を切るシーンでの、応答するようにラジオを大音量にする件も感動を喚起させる演出だ。評価が分かれるであろうラストも、自分としては落ち着くところのエンディングで安堵する。刑を服する場所からの手紙をヒロインは読んでいるからこそ、なんとか頑張って部屋の掃除をする健気さに胸が詰まる。将軍と姫が居たたまれなさを超えた別次元の恋愛を成就して欲しいと願わずにいられない没入感を味わわせてくれた作品である。それにしても監督の”対比”構成は解りやすくとても助かる。
障碍受容の歴史と極上の恋物語
本作は複雑で、痛い、でも素敵な愛の物語でした。
いろんな語り口のある作品ですが、本作か作られた約15年後の未来人が観た『オアシス』の感想を述べたいと思います。
①障碍受容の視点から
本作を観て、障碍に対する考え方やバリアフリーといった概念がここ20年近くでかなり進化したことを実感しました。
ジョンドウが脳性マヒの彼女・コンジュとデートしてる時、駅にはエレベーターもエレベーターもありません。ジョンドウはコンジュを背負い、車椅子をたたんで小脇に抱えて移動しています!これはビビりましたね。韓国だから一概には言えませんが、今は当時に比べて、車椅子の人もスムーズに移動できるような世界になっているな、としみじみと納得です。
焼肉屋に行っても、車椅子で顔面にマヒがあるコンジュを見た店の人が「閉店です」と言い放ってました。数年前、乙武さんも似たような体験をしていたようですが、レアだからこそ騒がれたと思います。当時はそこまでレアではなかったのでは、なんて想像します。おそらく、この当時は合理的配慮という言葉はなかった可能性があります。
ジョンドウの家族も、障碍への知識がほとんどない様子です。ジョンドウはおそらく軽度の知的障害か、発達障害があるように感じました。なにより、適応がかなり難しい人です。彼の家族はジョンドウをただの穀潰し扱いしています。兄はなんとか矯正させようと思っている様子もうかがえます。
現代ならば、弟あたりがスマホで「ジョンドウ兄貴はこの障碍にかなり当てはまるんじゃねーの?」と情報を取ってきて、ジョンドウの情緒的な味方の母親がサポート資源につなげる、みたいな展開がありましょう。さすれば、ジョンドウもかなり生きやすくなり、本来の優しさを適切に発揮して生きれる場所を見つけられたと思います。
一方で、障碍者の利権を貪る存在も描かれていて、この辺の感覚は時代を越えた普遍的な闇って感じでしみじみしました。ジョンドウの兄貴なんかも、憎しみが圧倒しているため、現代であってもジョンドウを虐待していたと思います。
未来人としては、障碍に対する差別や搾取は常に存在するものの、人類の努力の結果、社会的にも心理的にもバリアフリーは進んだのではないか、と結論付けたいと思います。
②極上のラブストーリー
本作は美しくも残酷な話であり、観手の心も激しく揺さぶってきます。
しかし、私にとって本作はストレートなラブストーリーで、愛の讃歌でした。好きな人ができて、人生に光が射し、2人が幸せな時を過ごし、相手を思いやることの尊さ・すばらしさが描かれており、私はそれを素直に感じ、心が震えました。
悲劇や障害(まさに害って感じ)が2人を苦しめますが、最終的には愛の強さを実感しました。2人を幸福と捉えない人も多いと思いますが、2人は幸福だと私は思っています。
そして、その愛の物語を強烈に演出しているのが、人類が創り出した最高の演出技法・マジックリアリズムです!
本作は脳性マヒの女の子・コンジュが、マヒのない状態になるシーンがいくつかありました。空想のシーンもありましたが、駅で歌を歌うシーンとタペストリーのオアシスから踊り手と子象が出てきて踊るシーンは、間違いなくマジックリアリズムでした。空想ではなく、その瞬間に明らかにありありと感じている心的現実でした。あの瞬間、現実以上の現実の中で、ジョンドウとコンジュは踊り手と子象に祝福され、熱い口づけを交わしたのです。今もそのシーンを思い浮かべると、激しくもあたたかい情動が心に沸き起こります。オアシスのシーンは映画史に残る名場面と言っても過言ではないと思います。
『ペパーミントキャンディ』と立て続けに鑑賞したため、集中力がかなり途切れてしまいましたが、気力が充実している状態で鑑賞したら、フルスコア行ったと思います。
イ・チャンドンは連続鑑賞オススメしません!重いから!
前科者と身体障害者とのラブストーリー
前科者の男と、脳性麻痺の女の恋愛譚。
そんな二人の、そんな二人だからこその、純愛が光る作品。
脳性麻痺がテーマだからと、社会派な要素を期待すると肩透かしを食うかも。
彼女に知的障害はないのに、親族ですら
彼女を意思疎通できる普通の人間として見ていなかったり、偏見の演出が過剰
愛し合った末の行為が、レ○プ扱いされて、
しかも喋れないため身の潔白を主張できずに刑務所行きというのもどうか。
筆談でもなんでも、コミュニケーション方法はいくらでもあるわけで。
そういうところは置いといて
純粋で真っすぐな男の愛の物語として観れば、
韓流らしいといえばそうだけど、好きな人はハマる映画だと思う。
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