オアシスのレビュー・感想・評価
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「演じる」のではなく、「生きている」
日本では2004年に初公開されたイ・チャンドン監督の「オアシス」(2002)は、恋愛映画の概念を覆すような、詩的でありながら破壊力を持った作品です。ソル・ギョングが演じる社会に適応できない青年と、ムン・ソリが演じる脳性麻痺の女性の極限の純愛を描き、第59回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)、ソリがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞しました。
主演ふたりの演技には驚愕します。ギョングが演じる刑務所から出所したばかりの青年ジョンドゥは、落ち着きがなく、周囲をイラつかせ、29歳ながら子供のように無邪気で、家族からも煙たがられてしまう。ソリが演じる脳性麻痺のコンジュは、白いハトや蝶々が飛んでいるように見える部屋で、壁にかけられた異国の絵を眺め、ラジオを聴いてひとり夢想する日々。
そんな社会から厄介者扱いされていた二人が出会い、彼らなりの愛を育んでいく姿に心打たれます。ギョングもソリもこの難役を「演じる」のではなく、「生きている」ようにしか見えません。チャンドン監督の名作「ペパーミント・キャンディー」(1999)でも共演していますが、同じ役者だとは気づかないくらいです。
そして、脚本も手掛けているチャンドン監督の演出には唸らされます。障がい者を扱ったデリケートな物語ですが、二人の純愛を極限まで描き切ることで、映画的なファンタジー、もしくはコメディの領域にまで高めてしまうのです。車椅子の上で自由に動けずにいたコンジュを映していたカメラがパンしてジョンドゥを映していると、コンジュが健常者の姿になってフレームインし、普通のカップルのようにじゃれ合うシーンなどは秀逸。現実と幻想の境界線を軽やかに越え、交じり合わせてしまう映画表現には胸が熱くなり、改めて映画の力を感じることができます。
すごっ👀
観てからひと月以上経ってもなんと書けばいいのか悩み続けた映画。
とにかく主演の二人の演技の凄まじさは必見💡
【様々な理由により、世間から疎外された男女の恋を描いた作品。韓国映画の底力を感じると共に、若きソル・ギョングの確かな演技に魅入られた作品。真の人間の善性と悪性を見事に抉りだした作品でもある】
■刑務所を出て家族のもとへ戻ったジョンドゥ(ソル・ギョング)は、家族たちから優しくない扱いを受ける。
彼の罪状はひき逃げによる過失致死、及び余罪である。
ある日、被害者家族を訪れた彼は、脳性麻痺のコンジュ(ムン・ソリ:今作の名演がありながらその後映画からは遠のく。幸せな生活を送られている事を願う。)と出会う。
2人はやがて惹かれあい、愛を育んでいくが、周囲は彼らを理解しようとしなかった。そしてある事件が起こり…。
■個人的な意見で恐縮であるが、ソル・ギョングさんは韓国俳優さんの中でも、好きな俳優Top10に入る方である。
マ・ドンソクの様に剛腕で魅せる訳ではないし、イ・ビョンホンの様にイケメンであらゆる役を演じる訳でもない。
だが、私が劇場で観た「名もなき野良犬の輪舞」体脂肪を極限まで絞った「殺人者の記憶法」傑作である「1987 ある闘いの真実」「君の誕生日」により、名優だと思っている。
今作はこの方の、若き日の作品であり、興味深く鑑賞した。
◆感想<Caution 内容に触れています。>
・幾つかの罪を追って刑務所で数年過ごし、出所したジョンドゥに対する家族の扱いは冷たい。後に明らかになる彼が親族の罪を被って、刑務所で過ごした事実を考えても、彼が家族にとって、お払い箱にしたい人物であることが分かる。
ー 彼が、軽い脳性麻痺、もしくは知的レベルの低い人物であることが分かる。劇中では、描かれないが。-
・そんな、ジョンドゥが【自らが犯した罪ではない】被害者の家庭を訪れるシーン。そこには、亡き父親の息子夫婦が引っ越しをする際中であり、一人残された軽度の脳性麻痺と思われるコンジュが居た。コンジュの兄夫婦は身体障碍者に支給される住居に住んでいるふりをして、自分達はその家を出て、一人残したコンジュの面倒を臨家の女性に託す。
ー これは、是枝監督作品にも通じる、利権だけを取る、家族の崩壊である。ー
・ジョンドゥは、コンジュの姿を見て、近寄り犯そうとするが、激しく拒否される。
ー 当たり前である。この時点はでは、ジョンドゥの悪性が全面に出ている。-
・だが、コンジュが一人残された姿を見て、ジョンドゥの中の僅かな善性が表面に出てくる。
ー 身障者の方々は、自分に近づいてくる人間の善悪を鋭く見抜くと巷間では言われているが、この辺りのシーンでは、強ち間違いではないかな、と思う。-
■ジョンドゥが、コンジュをカラオケに誘うシーン。彼女は上手く歌えないが、その帰り、地下鉄の駅で身体自由になったコンジュが、車椅子に座っているジョンドゥに優しく接する幻想的なシーンは忘れ難い。
<そして、コンジュが、ジョンドゥに対し”一所にベッドで寝ましょう‥”と言い、彼を誘うシーン。だが、その時にコンジュの愚かしき兄夫婦がやってきて・・。
警察に連れていかれたジョンドゥに対する扱いに対し、一人激烈に身体を張って抗議するコンジュの姿。
今作は、真の人間の善性と悪性を見事に抉りだした作品であると思います。>
主演2人の演技力
が凄すぎる。社会から疎まれる存在の2人の恋にただただ胸が苦しくなりました。
とてもよかった
脳性麻痺の彼女と引き離されて切ないラストを迎えるのだけど、二人の恋が長く続いて倦怠が訪れたらどのような展開を迎えるのかと考えながら見ていて、もしかしたらそっちの方が残酷な結末だったかもしれない。
先入観の罪
愛は人それぞれ、それを歪にも美しく具象化した作品。
しかし、本当に歪なものは健常者の価値観であるという事実を突き付けられ、
果たして社会に蔓延する常識という呪縛を自分は払拭できるのだろうか?
そう考えてしまった。
この作品の描くもどかしさは、多様性のある社会とは私たちの見ている予定調和の
枠の外にあるのだということに気付かせてくれた。
目を背けるから何も見えないんだ
常識で行動するのが全て正しい訳じゃない
もしくは、正しく生きているばかりが求められている訳じゃない
視点を変えたら、人間味があって美しい生き方と言えるかもしれない
人になんと言われようとも、その人のために真っ直ぐに行動するのは、他人に迷惑をかける事になるかもしれないが、その人にはありがたいこと
障害のある人から、つい目を背けて、それがマナーだったり、優しさだと勘違いしていた自分に気付かされてしまう作品でした。
花送られて?
家押し入ってきて、凌辱された男に花贈られたくらいで気を許しますかね。かわいいって言われたくらいで、足舐められた男でっせ。無理あるでしょう、憎いし屈辱的だし、恐ろしいでしょう。
身障者の方が選んだ男がこんな男という設定は、
ピュアというよりイージーだし公平じゃないし、
ただお互いが孤独であるという以外に結びつきがない。
レイプされてもオーケーなくらい、相手選べないのは悲しすぎるでしょう。
少なくともこの映画内では多くの相手を選べない身障者の方の立場につけ込んだコミュニケーションと捉えられ、
恋愛を舐めてるような気もします。
ただ、役者がいい。モチーフの木の枝もいい。高速道路のお姫様抱っこも浮かれた至福の様子が伝わってくるし、演出に嫌味もない。部屋でインドの踊りに囲まれてのキスシーンも良かった。時々妄想の健常者としてのシーンも挟み込まれてあれはかなり切なかったです。
魅入るところはたくさんあり、
舞台設定だけどうかなという疑問をおいておけば、
良い映画だったと思います。
恐ろしい純愛だ
イチャンドン監督が一気に好きになる映画でした。
本当にこの作品に関わったすべての人が、一生食うに困らないお金をもらってほしいと思うくらいいい映画でした。
ラストが感傷的過ぎないのも、素敵で。
まだ続くよって感じで終わって本当よかったです。
あれで、バッドエンドだったら立ち直れないです。
高速道路のシーン、オアシスの住人が絵から飛び出してきて踊るシーン、駅のホーム、駐車場での喧嘩、すべてが美しかった。
どんな映画にも、いいシーンは必ずあると言った人がいたけれども、この映画はもうそんなシーンしかなかったですな。
これが愛だ、と納得のいく作品でした。
蝶々
最初は過剰な障害者の描写に引いてしまったのだが、徐々にのめりこんで行ってしまう不思議な映画だ。光を手鏡に反射させて鳩や蝶を映し出すという、微妙ではあるが効果的なCGにも釘付けになってしまう。
社会から疎外された純粋な心を持つ二人。ジョンドゥはまともな職にも就かず、大人になりきれないと兄に叱咤される。そして、前科3犯ではあるが決して根っからのワルではなく、子どもが親からコッソリ小額のお金を盗む程度なのだ。障害者であるコンジュは兄や周囲の人たちに世話されているが、利用されているような面もある。とにかく孤独でラジオだけが唯一の友達なのだ。
時折、コンジュの妄想シーンが随所に散りばめられ、思わず微笑んでしまったり、周囲の人間の世間ずれした台詞に失笑を呼んでしまう。二人の純愛と周囲から疎外された二人だけの世界が笑いのバランスと調和されとても心地よかった。
そして、あの事件が起きてからはコンジュが緊張のため喋れなくなることと、彼女の名誉のためにあくまでも真実を語ろうとしないジョンドゥの男らしさに涙してしまうのだ。むしろ、男性の目で見たほうが泣ける映画かもしれない。
【2004年9月映画館にて】
リアルな演技に圧倒されるが…
女優さんの障がい者の演技がとてもリアル。
こんな演技できる人ほかにいないだろうな。
社会からはみ出して周りから理解されない恋愛。2人にしかわからない世界。
終わり方モヤモヤする!思うことたくさんあるけど現実じゃなくて映画だしな、、
演技は高評価だけど内容はうーん、って感じかな。
イ・チャンドン
障害のない健常者としての姿が現れるいくつかのシーンは、自分自身にある憧れが顕在化したものだとしたら、それはなにも障害のあるなしに関わらず、おれもおんなじだ!と感じた。電車で目の前にカップルが座って仲良くしてたりしたら、憧れの目で見ちゃうし、おれもあんな風にカッコよく振る舞えたらなーってクラスの人気者見て思ったりしたし。それと本質的には同じだと感じた。
最後の木とラジオのシーンは本当良かったけど、壁に木の影が揺れてるのが怖いってゆうのがずっとあったから、ラストは、そこに必死に木を切る男の影が写ったりしても良かったのかなーって思った。「ONE PIECE」の空島のラストみたいに。
印象的で好きなショットはバーニングの方が多かったけど、ロミオとジュリエット的な恋愛映画で初めてちゃんと切なく感じられたくらいに、ストーリーが好き。
足の運び
真っ直ぐには運ばないジョンドゥの足。次の一歩がどっちに向くのか危なっかしい。座ってても貧乏ゆすりが止まらない。こちらに安堵のいとまを与えない。キャラクターをよく示すソルギョングの名演。
他方、文字通り体当たりの演技のムンソリ。喜んでいるのか拒んでいるのかこちらから分からないような演技に徹する。表現できぬ人の苦悩。美しいオアシスでの抱擁。光と影しか与えられず、その中でも希みをながらえる人の根の強さを表す。
韓国映画スゴイ!
韓国映画恐るべし!社会的タブーにここまで斬りこむとは・・・
幻想のシーンでインド人少年までは良いが、インド象登場には笑ったね。
ムン・ソリさんの体当たり演技はスゴイ!
もどかしい
韓国映画ファンですが、内容を知らず、評価の星の数の多さでチョイス。観賞後、また一つ良質な映画、それも韓国映画に出会えて感動しました。
主人公の2人の演技力はもちろんのこと、演出、ストーリー展開。どれもこれも、流石の一言。
脳性麻痺の女性コンジュを演じたムン・ソリさん。
こんな演技ができる女優さんは世界中探してもなかなかいてませんね。彼女がだんだんとただの障がいをもった人間ではなく、生きることを楽しみ、自分の感情に素直になり、恋をする様は見ているこちらに希望を持たせます。最初の関わり方はハッキリ言って最悪ですが、徐々に心を許し、2人だけの世界が幸せなものになっていく。脳性麻痺ではない自分になって歌を歌い、踊る姿。幻想であっても幸せな2人の空気に心鷲掴みにされました。
ジョンドゥ役のソル・ギョングさんも素晴らしい。
前科者であるがために、家族からも警察からも社会からも蔑ろにされる。一つの罪は実際には自分ではないにしろ、その事を根に持ったりしない、純粋な青年を演じきり、最後はもうただただ愛する人を想うだけの将軍というより王子様でしたね。
ロミオとジュリエットのようだと他の方のレビューにありましたが、まさにそれですね、、2人だけが知っている、2人の愛だけが全てであることの幸せ。
本当に良い作品に出会えました。
決して明るくはないけれど、ラストシーンのコンジュの姿が、心を明るくしてくれるひだまりのようでした。
剥き出しの、これぞ映画!
社会的に不適合と言われる男性と脳性麻痺の女性の恋愛物語。最初はヘビーで見終われるかと思いましたが、途中から目が離せなくなり、頭を殴られるような衝撃を突きつけられたような映画でした。TVドラマを映画館で上映しているような作品が多い中、これぞ映画という作品じゃないかと思います。「ジョゼと虎と魚たち」と通じる作品でしたが、ジョゼ〜が美化された演出作品と感じるほど、こちらはもっと剥き出しで、心えぐる作品でした。いゃ〜、韓国映画、韓国俳優の凄さを知らされました。
観てよかった
主演2人が驚異的な演技を見せてくれた。
ジョンドゥは落ち着きもなく、何をしでかすか分からない、実際クズな行為をするし、イラっとする。しかし、観ていると次第に彼のただただひたむきな純粋さに惹きつけられてしまう。
コンジュは脳の病に犯されていて、空想の世界に浸っている。そんな彼女がジョンドゥと心を通わせていき、空想の世界で健常者としてジョンドゥと接するシーンには本当に胸が熱くなったし、普段とのギャップと役者の表現力には本当に驚かされた。
2人が周りに好奇や冷たい目で見られるシーンが多々ある。だけどそんなものは関係ない。社会に適応できなくても、周りになんと言われようとも関係ない、純粋な2人だけの世界、純愛にはグッとくるものがあった。
ミラクルはないと思ったが
ペパミントキャンディと、オアシス、どちらを見るか迷いペパミントを見たが、正直よくわからずイライラ感のみ積もりどうしてそうなん?もっと普通に行けたんじゃない?というもやもやがずっと充満。オアシスは設定からどうにもならない感満載だったので鑑賞が後回しとなったが、本作の2人はどうにもならないことをどうにもならないとは思わず真摯に自分や欲望を出しきっていて、あらすじの印象とはまるで違うものだった。2人の演技力凄まじくもはや魂そのもの。監督と主役2人は本当に伝えたいことがある時その者のみが表出できる表現力である。恋愛映画で普通に起こるお手軽なミラクル、奇跡はないのだ、牧師さまが祈っても、どんなに楽しい時間を過ごしても、ミラクルはない、重すぎる現実、と思いまた前半の性暴力や兄の身代わりなどの伏線引っ掛かり歯痒い思いで見ていたが最後にインドの踊り子子ども象と踊った時の花びらのようにホコリが美しい花のように舞う部屋の彼女を見て、甘美な感傷とは全く別次元のミラクルを感じた。
ムン・ソリがすごい!
言うまでもなくソル・ギョングはさすがだが、
この映画に関してはそれ以上にムン・ソリの存在感がすごい!
ムン・ソリなしにはこの映画は成り立たないだろう。
こんな演技ができる女優が日本にいるか?
それ以前に、日本で脳性麻痺の女性をテーマに
映画をつくるなんてできるか?
このテーマを企画しても、その段階でボツだろう。
18年も前の映画だが、久しぶりに感動した。
障碍者版ロミオとジュリエット
障碍者どうしの恋愛にとって最も大きな「障害」は、支えるべき周囲の健常者との壁の高さなのかもしれない。
二人の純愛と性愛は、形は違えど健常者とのそれと何ら違いはなく、むしろ「そんなことあるはずがない」という健常者の決めつけによって起きる悲劇が切ない。
韓国映画はレベル高すぎ。
こういうのをなぜ日本でできないのか?
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