「FAIRY TAIL」オアシス(2002) いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
FAIRY TAIL
童話のようなファンタジー作品である。勿論、社会問題を想起させる現実問題ではあるが、その両世界を見事にシームレスに行き来する演出には唸った。それはその難解な演出を高等テクニックで見事演じきった両主人公の力量に他ならない。あまり映画や文学に接さない人からすれば混乱を来す構成かもしれないが、どこからが現実でどこからがイマジネーションなのかを感じ取れる豊かな感情があればその大胆で際限がないシーンの数々に抵抗なく受容れると信じる。
冒頭の鏡の反射が鳩、又は蝶にイメージされる具体的効果は心を掴まされる。自閉症の娘とADHDを疑う男の、その余りにも無秩序かつ、制約されない美しさ、そして対する周りの人間達の社会的だが、どこか殺伐としてしかもそんな“妖精”達を利用している狡賢さが醜く露呈されていて、その対比の際立たせ方に目を見張る。初めは粗野でダメ男であったのが、実はその犯罪歴は兄弟達の身代わりであることが明るみになるにつけ、男への共感がグッと増す展開は素晴らしい。一見して反社会的行動と思える数々の行為が、実は二人にとって何も間違っていない統一感を以て世界を彩る。そして本作の極みは何と言ってもヒロインの自閉症とそうじゃない姿の変化を何の継ぎ目もなく見せる件だ。ヒロインのイマジネーションをこんなにも深く、そして悲しく、でも切なる願望を表現した方法は他に類を見ないのではないだろうか(探せばあるのだろうが)。
クライマックスでの枝を切るシーンでの、応答するようにラジオを大音量にする件も感動を喚起させる演出だ。評価が分かれるであろうラストも、自分としては落ち着くところのエンディングで安堵する。刑を服する場所からの手紙をヒロインは読んでいるからこそ、なんとか頑張って部屋の掃除をする健気さに胸が詰まる。将軍と姫が居たたまれなさを超えた別次元の恋愛を成就して欲しいと願わずにいられない没入感を味わわせてくれた作品である。それにしても監督の”対比”構成は解りやすくとても助かる。