「コンジュ以外は受け入れられない。」オアシス(2002) だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
コンジュ以外は受け入れられない。
主人公のジョンドゥはペパーミントキャンディーの主人公と中の人が同じです。
中の人(ソルギョングさん)、凄いです。このふり幅…いやーびっくりしました。
ヒロインのコンジュちゃんも、ペパーミントキャンディーのユンスニムさんと中の人が同じです。こちらの中の人(ムンソリさん)も、凄い…すごかったです。
役者の確かな力量を感じる作品でした。
映画の内容は、人の世はクソゲーなんですねという悲しい話でした。
私はコンジュちゃん以外の登場人物を受け入れることができませんでした。
ジョンドゥは、現在(2019年)であれば自閉症か発達障害かの診断がつく感じに見えます。wikiによる解説では社会不適合者と書かれていますが、自己責任でダメな人というよりは、明らかに特別な支援が必要な人に見えます。
なので、言動への一定の同情(のようなもの)は感じます。
が、
コンジュちゃんに性的暴行をしたでしょう。兄夫婦に踏み込まれた時ではなく、まだ仲良くなる前に性的暴行をしたでしょう。あれが許せないのですよ。
その後の交流がいくらほほえましくっても、私は受け入れられない。
ですのでジョンドゥに対して、平らかな気持ちでは見られなかったです。
ジョンドゥ兄(と弟)とコンジュ兄夫婦は、もっと許せないです。死んでもらいたいです。
コンジュ兄夫婦は、きれいな障害者向け住宅に、障害者であるコンジュを連れて行かず夫婦だけで暮らしているくそヤローどもです。
査察の時だけコンジュを連れてきて、あとはボロアパートに閉じ込め、
隣のあんまりちゃんとしてなさそうな夫婦に世話を任せてさ(月額20万ウォンって安すぎね?)。なんだあれ。
そして、コンジュちゃんがジョンドゥと同意の上でセックスをしてたときに
兄夫婦が訪ねてきてしまってレイプと勘違いしてジョンドゥは逮捕されますが、金払えば許しますよってジョンドゥの兄弟にゆってましたなあ。
ゲスだゲス!六道の外へ行ってしまえ!この上更に妹を金づるにする気か!この(お好みの罵り語をどうぞ)!!!!!!
という感じで、頭の血管が切れそうでした。
ジョンドゥ兄(と弟)は、ジョンドゥがこういう人だから、いろいろ大変なんかな。それにしたって冷たいし、だいたい出所後に迎えにもいかず、新しい住所も教えてあげてなくって、冬服も差し入れしてあげへんって、冷たいよな母を含め、なんて思ってたら。思ってたら!!!
なんと冒頭の出所の原因は、兄の!兄の!!兄の!!!
起こした事故の替え玉としてジョンドゥが逮捕されて、服役していた時の出所だったということがわかるんですねー。ぶったまげました。
ジョンドゥから替え玉を申し出たとのことですが、それにしたって。
自分の過失致死を代わりに背負ってもらって、この感じですか?
あー理解できん。兄きっもいわー。弟もきっもいわー。
とこちらも反吐がでそうでした。
よってコンジュちゃんの美しさのみを心の支えに見続けたわけですが、
なんとコンジュちゃんは前述の通り、性的暴行を加えてきたジョンドゥと何でか仲良くなり、恋人同士になるんですね。そして、ジョンドゥと同意の上でセックスをした(なんならコンジュちゃんが誘った)現場に、兄夫婦が突然やってきたんですね(誕生日だった?)。
初めてと思われるセックスにもそれなりにビビっていただろうし、その最中に他人に踏み込まれるし、恋人は犯罪者扱いされるし、でもびっくりしすぎてコンジュちゃんは何も言えないし、だれも誰もだ・れ・も、二人が合意の上で、お互いにしたくてしていた可能性を考えてくれないし…
コンジュちゃんは渾身の力でひきつけ?発作?暴れた?何かわからないけどかなり異様な勢いで咆哮します。
もうなんか、こんな世界には生きていたくないと私は絶望しました。
ラストは、警察署から逃げたジョンドゥが、コンジュちゃんの家の外の木の枝を切って、コンジュちゃんの部屋のタペストリー(オアシスと書かれている)に、怖い枝の影が映らない様に必死に枝を切り、部屋にいるコンジュちゃんはそれにこたえるよう、ラジオの音量を最大にして泣くというものでした。
コンジュちゃんは脳性麻痺で、完全に寝たきりではなく、自力で多少動けるし、話も調子が良ければ不明瞭ながら何とかできる、喜怒哀楽や知性はどうやら年齢にふさわしいくらいちゃんと育っている。ように私には見えました。
なので、兄夫婦のことどう思てたんかなとか、隣の夫婦のセックスの音を聞かされるのどう思てたんかなとか、最初のジョンドゥは怖かっただろうなとか、いろいろ思いました。
あと、脳性麻痺なしバージョンのコンジュちゃんを自分で想像しているシーンが幾つかあって、その想像が楽し気で、幸福感に満ちていて、現実世界のクソゲーさと非常にギャップがあって、より悲しみを強く感じました。
コンジュちゃんが映画の結末の後、どうやったら現実世界で楽し気に、幸福感に満ちた生活をできるだろうかと考えたけど、彼女の環境では、どうにも思いつかなくって、苦しいです。彼女が受けるべき公正さをどうすれば実現できるのでしょうか。
そして、この物語をどのように受け止めたらいいのかわからないです。
悪い作品だとは思いません。グロテスクなまでの強い個性が、世界や社会への疑問を薄れさせないという意味では、素晴らしい作品だと思います。
だけど、明日に希望を見出したいと常に願うわたしにとっては、その意欲が粉々に砕かれなかなか立ち上がれない感じで、再び見ようとはおそらく思わない作品でした。