「【貧しいながらも幼き娘二人と優しき夫と暮らしていた女性が、余命宣告を受けて初めて”生”の尊さに気付いていく物語。人生の終焉を告げられながら、僅か23歳でここまで出来る人間は素晴らしいと思った作品。】」死ぬまでにしたい10のこと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【貧しいながらも幼き娘二人と優しき夫と暮らしていた女性が、余命宣告を受けて初めて”生”の尊さに気付いていく物語。人生の終焉を告げられながら、僅か23歳でここまで出来る人間は素晴らしいと思った作品。】
ー 23歳のアン(サラ・ポーリー)の家族は、失業中の夫ドン(スコット・スピードマン)と二人の幼き娘、ペニーとパッツィー。
貧しきながらも、幸せな生活を送っていたアン。
ある日突然、腹痛に倒れたアンが検査を受けると、「あと2-3カ月の命」と宣告される。
誰にもその事実を話さないと決めた彼女は、「死ぬまでにしたいこと」リストを作り、一つ一つ実行していく。
■アンが夜のダイナーで書いた、10の死ぬまでにしたい事。
1.娘達に毎日愛しているという。
2.娘達の気に入る新しいママを探す。
3.娘達が18歳になるまで、誕生日にメッセージを贈る。
4.家族でビーチに行く。
5.好きなだけお酒とタバコを楽しむ。
6.思っている事を話す。
7.夫以外の人と、付き合ってみる。
8.男性を夢中にさせる。
9.刑務所のパパに会う。
10.爪とヘアスタイルを変える。
この中の”3.娘達が18歳になるまで、誕生日にメッセージを贈る。”は、橋本愛さん主演の「バースデーカード」で同テーマを軸にオリジナル脚本で勝負する吉田康弘監督により、描かれている。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・サラ・ポーリー演じるアンは突然の余命宣告及び体調不良にも拘らず、家族の前では気丈に振舞う。
- サラ・ポーリーの好演が光る。-
・恋人に去られたリー(マーク・ラファロ)とコインランドリーで出会うシーン。
リーは病気の疲れなのか寝てしまったアンを朝まで愛おし気に見ている。
しかも、アンの洗濯物も全て折りたたんでいる。
そして、彼がそっと忍ばせた本には、連絡先が書いてある。
- 上記、7.8に当たるのだが、品よく描かれている。ガランとしたリーの部屋でアンと語り合うシーン。他のレビュアーさんのコメントでは”不倫”と否定的に書かれている方もいらっしゃるが、私はアンの行動を是と捉えた。何故なら、アンはドンと17歳で知り合い19歳で子を設けている。推測であるが、アンは男性との交流は殆どなかったのではないか、と思ったからである。更に書けば、二人が情交するシーンは描かれていない。(有無は別。)死を目前にしての人間の行動欲望としてとらえた次第である。
そして、雨の中、車の中でアンを迎えに来たドンの姿を見て、ハンドルに顔を付け涙するリー。
彼女がリーに残したメッセージ”家具を買って・・。そして、部屋を新しく塗り替えて・・。”
今作のラストシーンはリーが壁を塗る後ろ姿である。
アンは死しても、リーに生のメッセージを遺したのだ・・。-
・臨家に越して来た同じ名前のアン(レオノール・ワトリング)が彼女に語った哀しき経験と彼女が行った行動を聞いたアンは、彼女を家に招く。
”帝王切開したら、シャム双生児だったの・・。父親は目も向けなかったわ。けれど、私は最後まで抱っこしていたの。冷たい部屋で最期を過ごすなんて悲しいじゃない・・。”
<車の中で、一人娘達へのバースデイメッセージをカセットテープに吹き込むアンの姿。夫への謝罪、母親への励ましの言葉。
人生の終わりを迎えるにあたって、僅か23歳でここまで出来る人間は素晴らしいと思った作品。
今作は、ペドロ・アルモドバルが製作を務めているが、成程彼らしい作品の風合だな、と思った作品でもある。>