「【”重い心臓病の息子の命を救うために、父親が起こした事。”今作は、経済的弱者に対する国民医療制度の在り方について観る側に問いかける社会派ヒューマンサスペンスの逸品である。】」ジョンQ 最後の決断 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”重い心臓病の息子の命を救うために、父親が起こした事。”今作は、経済的弱者に対する国民医療制度の在り方について観る側に問いかける社会派ヒューマンサスペンスの逸品である。】
■愛する妻デニス・アーチボルド(キンバリー・エリス)と息子マイクの3人で平和な毎日を送っていたジョン・クインシー・アーチボルド(デンゼル・ワシントン)。
だが、妻の車はローン未払いで差し押さえれらる。ジョンがリストラによりフルタイム勤務から半日勤務になり、収入が減っていたためである。
そんな中、元気だった息子が野球の試合中に突然倒れた。先天的な心臓肥大により、心臓移植以外に助かる術のない息子の命を救おうとするが、25万ドルの代金を現金で支払う必要があるが、加入していた保険は、ジョンが半日勤務になったために、グレードが下がっており、金を支払えなくなっていた。
ジョンは金を作る為、家財一式を売り払うがそれでも足りずに、止むを得ずに病院を占拠し、息子への心臓手術を要求する。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ジョンが病院を占拠した際、人質たちが彼の人柄に触れ、徐々に協力していく様が心に響く。ストックホルム症候群ではなく、正にジョンの息子マイクを助けようとする様と、経済的弱者に対する矛盾に気付いたからであろう。
人質たちも、経済的な弱者であるところは、設定が絶妙である。
・一方、病院を取り巻く警察の中で、自身の名誉だけを考えジョンへの狙撃を命じる本部長と、それを止めようとする老練なグライムズ警部補(ロバート・デュバル)との対比。そして、狙撃は失敗し本部長はすごすごと引き下がるのである。
・彼の人質になったターナー医師(ジェームズ・ウッズ)が彼に、的確なアドバイスをしていく姿は、観ていて心温まる。今作では、医師たちを患者を懸命に助けようとする人達としてキチンと描いている事が奏功していると思う。
■警察内部がTV局により、放映されている事により、世間的な同情をジョンが買う中、息子の命が付きようとしていた時に、ジョンが下した自身の心臓を移植するという決断。
その際に、デンゼル・ワシントン演じるジョンが涙を流しながら息子に語り掛けるシーンは、涙が零れる。
・母さんを大切にしろ。女王様の様に扱え。
・友人を大切にしろ。
・悪の道に入るな。
・人から信頼されたら、必死になって応えろ。
・金を必死になって、稼げ。
<そして、ジョンが拳銃をこめかみに当てて銃の引き金を引くシーンと、事故で脳死状態になった手首に献体をする意思を書いたリングを嵌めた若き女性の心臓が、マイクの心臓に適合すると分かるシーンからは、ハラハラである。
見事に心臓手術が成功するシーンからの、裁判でジョンが殺人容疑では陪審員裁判で無罪になるシーンと、人質を取った事は有罪になるシーンはリアリティがある。
そして、収監される父ジョンにマイクが”サヨナラ”というと、ジョンが”又ね、だろ!”という序盤に二人が交わした会話を持ってくる構成も粋である。
今作は、経済的弱者に対する国民医療制度の在り方について観る側に問いかける社会派ヒューマンサスペンスの逸品なのである。>