「移り行く季節、人生の喜びと悲しみ。伝わる人にはかなり胸に残る」春の日は過ぎゆく zx800さんの映画レビュー(感想・評価)
移り行く季節、人生の喜びと悲しみ。伝わる人にはかなり胸に残る
音、季節の移り変わりと、人生、恋や愛
ラジオ番組の制作者ということで、音を録音テーマにして
風にそよぐ竹の葉の音、自然の音、どこか懐かしく遠い記憶や感情に訴えかける音楽。
監督の前作、8月のクリスマスのユ・ヨンギルの映像密度が、素晴らしく、今回はヨンギル氏は参加していないものの、主人公は録音技師ということで、正直、期待した ”音“ を効果的に利用した画期的な映画とまではいかなかったが、自然の音や映画内で流れるピアノの音などは良かった。
ラストシーン流れていく風景や音、死が沈黙であるなら、自然の中で風を受け聴こえる音は生きていること喜びと悲しみ、過ぎていく季節、再び巡る季節。それを味わい一つ乗り越えた主人公の気持ちが伝わってきた。
最後主人公を移した画面が止まってエンディングになる。この表現も、過ぎ行く季節の中で写真のように記憶された記憶の一つであると伝わる効果的な表現だったと思う。
祖母の姿は恋や愛のうつり変わり、人生の春を経験し、秋を超え冬になり去っていく人生の先人として、今、人生の春を生き、恋や愛に悩み苦しむ青年に助言し去っていく、人間の季節を表したものだと感じました。
また認知症があるということで、恋や愛は認知症になっても忘れない人の人生で忘れられない出来事であり、それでも乗り越えられると諭す祖母であり、時空を超えて人々の生きる喜びや悲しみを体現した神のような存在だったと私は考えています。
zx800さん、コメントありがとうございます。
刺さる人には刺さる作品。そんな印象があります。
俺が観た時、母は認知症になっていて、認知症を扱った作品にはどうしても生で感じた物差しで疑いの目で見てしまう。そんな時代だったから俺には刺さらなかったのかもしれません・・・