山の郵便配達のレビュー・感想・評価
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そこに人生がある
中国は漢民族と満民族、それに数多くの少数民族で成り立っている国である。山の人々は山で暮らし、あまり平地に降りてこない。そこに自分たちの居場所がないことを知っているからだ。それでも若い人を中心に、少しずつ故郷の山を離れる人々がいる。そして電話もインターネットもない故郷と、下山した人々のいる都会を結ぶのは、昔ながらの手紙である。そしてそれを届けるのが本作品の主人公親子なのである。
息子は父とともに父の歩んだ郵便配達の道を歩く。どのような道を辿り、どのような町や村でどんな人に郵便を配達し、また預かっているのかを知る。そこには様々な人生があり、郵便配達員との様々な係わり方がある。父がそれらの人々を大切にし、また信頼関係を築き上げて来たことを息子は知ることになる。それはとりもなおさず、父の人生そのものなのだ。ささやかでつつましい世界だが、人に優しくする包容力のある豊かな精神と、寛容な人生観。息子は父の偉大さを知り、自分の父であることを誇らしく思う。
素晴らしい親子の、とてもあたたかい数日間を描いた秀作である。中国はやはり広大だ。こういう映画を作る才能が多分たくさんいるのだろう。ちなみに犬の演技も非常によかった。
親子
永年勤め上げた郵便配達の仕事を、今日を最後に、息子に引き継ぐ父親の物語。
一度仕事に出ると、数日間、長いときには数ヶ月も家を空け、山奥を回りながら、郵便を配る配達人。仕事一筋、しばしば家を空け、息子との関係も疎遠になりがち。父親の仕事を継ぐことになった息子へと、仕事引き継ぎの最後の配達に出かける。
無口な父親と、父親の仕事のことを何も知らなかった息子。父親の配達先で、父親と地域の人たちとの交流を通し、その苦労と、仕事の価値を感じ取る。そしてとりもなおさず父親の人生そのものであることを知る。
何しろ美しかったのが、湖南省の自然。照葉樹林文化などと言われ、日本との共通することが言われる、中国南部ですが、中国にこんなにも自然の美しいところがあるとは驚かされた。中国北部では歴史上早くから、木々は伐採されつくし、埃まみれの風景が印象がある。けど、南船北馬と言いますが、南部は自然が豊かなのですね。
#有る方のプレビューを拝見していて。原題の「那山 那人 那狗」の「山 人 狗」の中国語の発音が「1声 2声 3声」であることに気づいた。
そうね・・・「あの山、あの人、そしてあの犬」犬の前に、ワンクッション置いて訳したりすると 良い感じかも。
父、息子、犬の心温まるロードムービー
父親と息子
メインテーマは「父親と息子」である。
老いた父親に代わって、若い息子が郵便配達の職を継ぐ。中国奥地の山間部の村々を、毎回3日かけて周り、郵便物を集配する仕事だ。父親にとっては最後の、息子にとっては最初の旅。
いく先々での出来事や、道中の会話を通して、離れていた二人の心が寄り添っていく。私もまた一人の父親であり、一人の息子である。鑑賞しながら様々な思いが交錯し、川を渡るシーンでは涙を禁じ得なかった。
それにしても、舞台は1980年代なのに、徒歩で郵便物を配達していたことには驚いた。バイクぐらいは使っていてもよさそうなのに。
背景となる山河はとても美しい。おそらく何百年と変わっていない風景なのだろうと思う。
風土の中で家族の情愛を描くのは、『初恋のきた道』も同じだ。
旅の途中、息子は何度か「人はなぜ山に住むの?」と尋ねる。が、父親は答えをはぐらかす。
なぜ人は不便な場所から離れようとしないのか。生まれ故郷だからか。自分のアイデンティティがそこにあるからか。
逆にまた、便利であることがそれほど幸福だろうか。不便で厳しい暮らしの中でこそ感じられる幸福もあるのではないか。
そんなことをとりとめもなく考えてしまう問いだ。
作中、「幹部」だの「委員会」だの、いかにも中国らしい言葉が台詞に混じる。親子の情愛や美しい自然にそぐわない言葉のように感じた。
淡々と実直に。
いい作品なんですが・・・・・
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