フォロウィングのレビュー・感想・評価
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◇初期の時間の魔術師
クリストファー・ノーラン監督の初長編作品がリマスターされて劇場で上映されていたので鑑賞してみました。モノクロ手持ちカメラ🎥で切り取られるロンドンの下町、サスペンス仕立ての濃密さ、背景には不穏な音楽。
そして、お家芸である「解体+編集された時間軸」がこの時点で完成されていることに驚きました。時系列を入れ替える編集手法の類例は他にも見られるかもしれませんが、ノーラン監督が切り取る時間、場面には独特の緊張感があることに改めて気付きました。
一つは、モノを拡大して描写する手法(ここではピアスとかポートレート写真とかハンマーとか) もう一つは、俳優達の目付きの緊迫感。鑑賞しながら、だんだんと胸の奥に迫ってくるような、胸騒ぎしてくるような感覚が蠢きます。
都会に住む分裂病気質の若者の独白、撲殺される老婆のエピソードはラスコーリニコフ(罪と罰-ドストエフスキー)を、無意味な尾行(Following)は、ガラスの街(オースター)を想起させました。改めてノーラン世界を探究し直してみたくなるようなそんな作品でした。
全てが収斂されていく
長編初作からノーランの入り組んだ構成がある
全編を盛る音楽も彼の世界
小説家志望の覗き趣味から、空き巣へと物語は入っていく
そしていわくありげな女との交情
指を潰す金槌、殴りつける金槌、盗まれたピアスや下着や女の写真、盗まれたクレジットカードとサイン
そして消えていく本当の事実
いくつかの作品の原点を見た気がする
クリストファー・ノーランって「メメント」が初監督作だと思っていた。世に出てきたのが「メメント」ってだけで誤ったイメージを持っていたのだろう。それでも、ノーランの初監督となったら観ておくべきと思ってしまった。
誰かを尾けるようになった主人公が、尾行していた一人の男に話しかけられるという設定。時系列をいじった物語だが、それぞれ髪型、顔の傷でわかりやすく区別しているから、どの時の話なのかをわかりやすくしている。このあたりの時系列のいじり方が次の「メメント」につながったのかなと推測してみる。
正体不明のバディの存在とか、実は…という結論を提示する手法は「TENET」を思わせる。全編モノクロだからもっと昔の映画に思えてしまうのもわざとか。予算をかけずに面白い脚本で映画を撮るという、監督デビュー作として正しいあり方を見た。当時観たら斬新だ!となったかもしれない。それなりに面白かったけど、粗も目立ってしまうのも仕方ない。だって25年くらい前に作られたんだもの。
高校時代の友人に、1stアルバム好きのやつがいた。1stアルバムはバンド・アーティストのやりたいことや本質がつまっていると。もちろん例外もあるが、そうかもしれないと思う1stアルバムはたしかに多い。音楽の話ではあったが、この映画を観てそんなことを思い出した。音楽の世界では1stアルバムを超えられないバンドはたくさんいるが、クリストファー・ノーランはデビュー作を超えまくった。素晴らしい映画監督の原点を観たという意味で意義のある鑑賞だった。
かなりの知識を要する映画か…。
今年139本目(合計1,231本目/今月(2024年4月度)13本目)。
(前の作品 「サンパギータ」→この作品「フォロウィング」→次の作品「秒速5センチメートル」)
あの有名監督さんの初期のころの作品で、モノクロです。ただ、モノクロであることは理解の妨げになりません。
なぜか1週間限定で復活上映されていたのですが、この監督さんの作品は他の作品でも理解難易度も高いものが多く、しかもこの作品は70分ほどです。このため、一度見ただけでは理解は4割あるかどうか…というところがあり、何度か見るのが前提にされている(70分ほどで終わるということからも)ものの、いかんせん1週間で終わるし、VODシステム等でも見ることができないので、多々理解が難しい(もちろん、パンフレットなんていう生易しいものはない)のではないのかな…といったところです。
分野としても理系文系色々な分野に飛んでいるものの、時間の関係でどれも完全に拾いきれておらず、何を言いたいのだろう?という結構マニアックな話題をするかと思えばぶちっと切られたり、おそらく「初期の時代はこうだっだのだろう」という一つの見方でしか見られないのでは…と思いまうす(知的好奇心はくすぐられますが、すべて理解しきるのは無理?)。
とはいえ、有名監督さんの過去の作品が復刻上映されることそれ自体に意味があるものと思いますので、減点なしフルスコアにしています。
クリストファー・ノーラン監督の原型を観る
アカデミー賞作品賞はじめ7部門で受賞した「オッペンハイマー」で俄然注目の人になったクリストファー・ノーラン監督の長編処女作という本作を観て来ました。「TENET テネット」が2時間半、「オッペンハイマー」が3時間という超長編が当たり前のノーラン監督作品ですが、本作は70分なので、同じ”長編”とは言え最近の傾向とは異なりました。まだ売れるか分からない長編デビュー作なので、流石に2時間を超える作品を創れるだけの予算は集まらなかったのでしょう。また上映時間以外にも「オッペンハイマー」とは大きく異なることがあり、主要登場人物が3人に絞られたので、その点では分かりやすいと言えば分かりやすかったです。
とはいえ、時系列が行ったり来たりして観客の頭を混乱させるというノーラン監督らしい作風は、本作でも遺憾なく発揮されており、三つ子の魂百までを地で行ってるなと感心させられました。
内容的には、”尾行”が趣味の作家志望の男が、尾行に気付いた泥棒に嵌められてしまうというアッと驚く仕掛けがなされたお話でした。そもそも”尾行”が趣味って発想が面白かったですが、そんなヘンテコな趣味のために人生を棒に振ることになりそうな主人公の姿は、悲劇と言うより喜劇の域にあり、中々面白く、そしてどんなところに落とし穴があるか分からないという寓喩になっていたような気もした作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★4とします。
時間軸操作が、必要な気もするし、必要じゃない気もするし…。いわゆる...
時間軸操作が、必要な気もするし、必要じゃない気もするし…。いわゆる典型的な才能の片鱗というやつなのですかね。
デビュー作からノーラン流
ノーラン監督のデビュー作から時間操作、構成の複雑さ、音楽ともに監督らしい。
監督のデビュー作から観客に考えさせる(ここでは物語全般)ことを
テーマにしているのだから。なおさらだ。
ストーリーも斬新。観て良かった。
撮影もモノクロでドキュメンタリー風ノワールも唸らされた。
設定がかなり強引
「この設定はかなり強引じゃないの?」というのが、正直な感想かな。
ある程度のご都合主義は映画では許されるとは思うものの、あまりにも上手くいき過ぎているので、ラストの伏線回収の爽快さとは裏腹に、もやもやが残ってしまった。
ノーランくんのデビュー作だし、この後の「メメント」では度肝を抜れたし、ここ最近の練りに練られた頭の良さが爆裂している映画を連発している作品群の原点という意味では、感慨深いものはあるけど、、、
ちょっと、期待し過ぎてしまったかな?
この映画に仕掛けられたトリックは100%見破れない?
残念ながら、突っ込めない!?
16ピース程度の羽目絵🧩をバラして組み立てられた単純なストーリーなんだけど、
そのトリックは何か?
思い当たるのは、○○○だなぁ
あれは最初から二つのヒントがあった。
簡潔なラストだが一言多かったようだ。
( ̄▽ ̄)
フォロウィング
劇場公開日:2024年4月5日 70分
クリストファー・ノーラン監督が1998年に発表した長編デビュー作。
他人の尾行を繰り返す男が思わぬ事件に巻き込まれていく姿を、時間軸を交錯させた複雑な構成で描き出す。
作家志望のビルは創作のヒントを得るため、街で目に止まった人々を尾行する日々を送っていた。
そんなある日、ビルは尾行していることをターゲットの男に気づかれてしまう。
その男コッブもまた、他人のアパートに不法侵入して私生活を覗き見る行為を繰り返しており、ビルはそんなコッブに次第に感化されていく。
数日後、コッブとともにアパートに侵入したビルは、そこで見た写真の女性に興味を抱き、その女性の尾行を始めるが……。
1999年・第28回ロッテルダム映画祭で最高賞にあたるタイガーアワードを受賞するなど高く評価され、
鬼才ノーランの名を一躍世界に知らしめた。
2024年4月、デジタルリマスター版にてリバイバル公開。
この映画に仕掛けられたトリックは100%見破れない
フォロウィング
劇場公開日:2024年4月5日 70分
これからもずっとフォローさせてください
俺、完璧に分かったぜ!
とは、悔しいけれど、相変わらず言えません🤣
でも面白いのだから、やっぱりノーラン監督は凄い!
どういうストーリーが浮かんで、場面と人物をどう分散させて、どう繋がりを持たせるか。何よりも観客をどう騙してどう納得させるのか(理解できようができなかろうが、楽しめたという意味での納得感という意味です)。
昔からそんなことばかり考えていたのですね。
映画の世界で才能を発揮してくれてありがとう!!
さすが衝撃のデビュー作
・尾行趣味の主人公
主人公の男は尾行が趣味だ。
通行人を見つけては尾行をしている。なぜなら人の私生活が気になって仕方がないからだ。
ただ決して相手に危害は加えず気付かれることもない。少なくともしばらくはそうだった。
・泥棒の男
だが尾行男はある日、はじめてその尾行を気づかれてしまう。
そしてカフェで相手の男に問い詰められる。だが話して行くと、驚くことにその相手は本職泥棒だった。
しかも完全に金品目的の泥棒ではなく、空き巣に入ることで人の私生活を覗き見するという尾行男と同じような趣味を持つ人間だっだ。
泥棒は尾行男を誘い、二人組で人の家に空き巣に入るようになる。
・BARの女
尾行男はBARで女と出会う。そして恋仲になるのだが、その女は前に空き巣に入られたと話す。
なんと泥棒男が前に空き巣に入った家の女だったのだ。
・女とハゲ
女はまた別のハゲの男と微妙な関係にある。(劇中でもこの男は何回もハゲと呼ばれるのでちょっと笑ってしまった)
ハゲはちょっとした権力者で、かつて女の部屋でまた別の男をハンマーで殴り殺したことがある。借金を背負った男の指を砕き、頭を砕いたのだ。
なので女はハゲを怖がってきっちり別れることが出来ずにいる。
そしてハゲは金庫に女の写真を保管しており、それが女の弱みとなっている。
なので女と恋仲である尾行男は彼女のためにハゲの本拠地に乗り込み、金庫の中から金と写真を盗み出すのだ。
だがそこでハゲの手下に見つかり、手下をハンマーで殴り殺してしまう。
・女の裏
尾行男はハゲの金庫から盗みを働いた後、怒りを感じながら女の元に駆けつける。
なぜなら彼が取り戻した写真は女の弱みを握るものでもなんでもなかったのだ。女の目的は単に金だったのか?
そこで女は真実を尾行男に告げる。
実はこれは女のためではなく、女の別の愛人のための犯行計画だったのだ。その愛人とはなんと、尾行男が最近行動を共にしていた泥棒男のことであった。
・泥棒音の罪
事の顛末は、泥棒男がかつてどこかの家に泥棒に入った時、すでにその老女は誰かによって殴り殺されていた。
それで泥棒は警察に呼ばれるが、どうやら罪を着せられそうで身が危ない。
そんな時、自分のことを尾行する男の存在に気づき、尾行男を泥棒に仕立て上げ、わざと自分の女にハニートラップを仕掛けさせて、最後には泥棒男と似た手口の反抗をさせて、自分の身代わりに濡れ衣を着せようとしたのだった。
・尾行男の出頭
自分も人を殴り殺すという罪を犯してしまった尾行男は、警察に出頭する。そして真実を全て告白するのだった。
泥棒男のこと、その女のことや、自分の犯行や、誰かに殴り殺された老女のことなどをだ。
しかし警察は老女のことなど知らないと言う。まさか。何故か。
つまり尾行男は多重的な罠にハメられており、殴り殺された老女など存在しなかったし、泥棒男の存在の痕跡を残すものもひとつもない。泥棒男は雲のように証拠を残さずに消えてしまい、残されたのは単に罪を犯した尾行男だけだ。
しかも尾行男が自首したその朝、女も殴り殺されていたことが尾行男に告げられる。
・殺された女
殺された女は泥棒男の愛人であり、一緒に尾行男を罠にかけたかと思いきや、まだ裏の真実があった。
女は権力者のハゲの殺人をネタにハゲをゆすっていた。以前そのハゲに女の始末を依頼された泥棒男は女に取り入り、女の愛人となり、金庫の金と引き換えに最後には女を始末したのだ。
だが女を殴り殺したハンマーには、尾行男がハゲの手下を殴り殺した血もついており、疑われるのは尾行男だけ。
このように、本作は多重的に仕掛けが張り巡らされている劇であった。
・映画館で観た感想
非常に良かったし見応えがあった。上映時間は70分だしちょっとした小作品かと思いきやだ。
「オッペンハイマー」を観てクリストファー・ノーランという監督にはじめて興味を持って本作も観に行ったわけだけれど、デビュー作がこれというのは確かに衝撃だろう。
監督、脚本、ショットもクリストファーノーランとクレジットされていたので、自分でカメラを回したのだろうか。
オッペンハイマーでもそうだったが、クリストファーノーラン監督は時系列をバラバラに配置して観客を混乱させて、こちらに考えさせるのが好きだなと思った。僕もそんな映画は好きだ。
本作では作中できっちりと種明かしもしてくれるので親切だとは言える。
・会場
もうそろそろテアトル梅田に名前が変わるシネリーブル梅田にて。
客席はけっこう埋まっていた。おそらく僕みたいにオッペンハイマーで興味を持って観にきた人が多かったんじゃないだろうか。
・70分
70分は時間だけ聞くと短い印象だが、映画をいざ観終わってみると決して短い感じはしなかった。
この世の全ての映画が70分から90分ぐらいになれば良いのにと思う。3時間もスクリーンを観続けるのはなかなか集中力がもたない。
と言いつつオッペンハイマーは3時間の大作だったけど。
・なぜ白黒なのか?
1998年の作品らしいが、何故か白黒だ。舞台設定がおそらくCD全盛時代ぐらいなので、その時代の感じを表すのに白黒が選ばれたのだろうか。
デビュー作ということもあって決して潤沢な予算はなかっただろう。切り落とすべきところは切り落として狙い澄ましたように名作を作り出したノーラン監督。なんとなく白黒は映画ファンの受けも良さそう。
さすが。
クリストファーノーランの長編デビュー作
さて有名監督長編デビュー作は要チェックです。
脚本も監督も撮影もノーランやってますね。
欧米だと撮影勉強してから監督勉強する流れなんで出来て当たり前らしいです。現場でレンズのチョイスをDPに質問されること多く、知識ないとやばいです。
舐められちゃいます。
フィルムノワール意識したのかザラッとした白黒で話も中々面白いです。編集に少し癖があり「テネット」「インセプション」「オッペンハイマー」思い出しました。
やっぱり初長編でここまで出来ればやはり凄いなと思います。
複雑な内容を捌き、整理する能力は、監督には重要スキルだと思う。
好奇心は猫をも殺す
処女作からお見事。バラバラになった時間軸を頭の中でなんとか再構築し、だんだんと真相が見えてくる。そして、クッキリと見えたところで終幕。
ボコボコにされて、口にねじ込まれた手袋を吐き出す。そんな冒頭のシーンが、キレイにつながる。そこは、スッキリしたんだけど、殺された老婆って出てきた?
好奇心は猫をも殺す。それを地でいくお話でございます。
さすがノーラン
テンポよく、物語にグイグイ引き込まれる。先が読めない。
デビュー作だが、本作の映像テクニックがその後の大作すべてにいかされているそうだ。
ひねりの効いたサスペンスだが、時系列をシャッフルすることでさらに面白くなっている。
いやー良いものをみた!
クリストファー・ノーランが『メメント』(2000)の前の1998年...
クリストファー・ノーランが『メメント』(2000)の前の1998年に発表した長編デビュー作でこの頃から時間軸を交錯させた複雑な構成で描くイギリスのモノクロ映画。
人は「奪われると、その価値を知る」そんな変な事を想像して違法な行動をとる男達。
ロッテルダム映画祭で最高賞を受賞するなど高く評価され、鬼才ノーランの名を一躍世界に知らしめたらしい。2024年4月にデジタルリマスター版にて映画館でリバイバル公開されるが私はDVDにて。
レンタルDVDには日本語吹き替えも有り。
時系列再整理版も同時収録のDVDで鑑賞。 監督・脚本はクリストファ...
時系列再整理版も同時収録のDVDで鑑賞。
監督・脚本はクリストファー・ノーラン。
長編デビュー作で、製作・撮影・編集も兼務しています。
90年代末の英国ロンドン。
作家志望だが現在は無職の青年ビル(ジェレミー・セオボルド)。
生来の好奇心も手伝い、創作のネタを得るため、しばしば通りすがりの人々の後をフォロウ・尾けている。
ただし、相手の住居や職業がわかった時点で、尾行を中止するのを常としていた。
そんなある日、身なりのいい青年(アレックス・ハウ)を見つけて尾行したところ、カフェで尾行がバレてしまう。
男はコッブと名乗り、不法侵入をして、他人の私生活を覗くのが趣味だ、ついでに小物を盗んで換金している、興味があれば同行しないか、と誘われ・・・
という物語で、冒頭、警察の取調室らしきところでビルが尋問されるシーンからはじまり、コッブから誘われてある部屋に侵入するまでは、いくつかのインサートショットで時間は前後するものの、おおむね時系列どおり。
こののち二軒目、三軒目と侵入を繰り返すが、このあたりから時系列が組み替えられていきます。
ビルがブロンドの美女(ルーシー・ラッセル)と出逢ったあたりからは、ビルの身なりも立派になり、彼の風貌から時系列のどの辺に位置するエピソードかが分かる仕組みになっているので、観ていて、それほど混乱することはありません。
ブロンド美女は暗黒街のボスの情婦ということも判明し・・・
と後半は、時系列組み換えによって、どんでん返しの連続。
いや、こんなにどんでん返しがなくてもいいんじゃない?と思うほど。
モノクロ画面の撮影も巧みで、登場人物のキャラクターも描き分けが出来ており、クリストファー・ノーラン作品では上位に位置する出来だと思いましたが、これほど時系列組み換えは不要なのでは?とも思った次第。
なお、エンディングで群衆に消えるコッブは、のちの『バットマン(ダークナイト)』の原型ともいえるでしょう。
<追記>
つづいて、時系列順に再整理されたクロノロジカル版。
冒頭、ビルの警察での取り調べののち、ビルがコッブと出逢うあたりまではオリジナル版とほぼ同じ。
すぐに一軒目の住人とレストランですれ違い、押し込み強盗であることがバレるのではないかとビビったビルが、身なりを整え、そして三軒目、ブロンド美女の部屋へ侵入。
早々に美女の正体が(観客に)判明するあたりから、事件に巻き込まれた主人公が、さらに泥沼にはまり・・・しかし、事件にはさらに裏の裏がある、と正統派ハードボイルドの雰囲気。
この時系列再整理でもどんでん返しがいくつもあるので、物語の先が読めないというのは同じ。
オリジナル版を時系列順に再整理しただけで新たなシーンなどは追加されていないので、場面場面のつなぎがぎこちないのが難点だけれど、どちらかというとこちらの方が個人的には好み。
ノーラン監督渾身のデビュー作
作家志望の青年ビルは尾行(フォロウィング)が日課。ネタ探しの人間観察で始めたとするが、一人一回限りとか女性を暗がりでつけないとか自身にルールを課すあたりがノーラン監督らしい。
ある日コッブという男に尾行を気付かれて腐れ縁が始まる。どちらも作家志望だとするが「尾行なんていかにも初心者、他人を知りたいならてっとり早く家を探るのが一番」とのたまうコップに引きこまれるビルでした。
人は覗きやストーカーまでは行かないものの、他人の私生活に関心がある筈と言う前提でのつかみと展開。コッブがやってることは空き巣だが金目のものは盗まない、「ガラクタも無くなって初めてその価値に気付くのさ」と屁理屈まがいの泥棒哲学まで語るから妙に納得させられるノーランマジック。
このまま引っ張るのかと思ったらブロンド女が絡んで二転三転、人は見たものを真実ととらえがち、裏にそんな謀略があったとは・・・。
人間の心の闇を描き続けるノーラン監督の長編デビュー作、特典の監督インタビューで知ったのだが、予算の無いことから様々な手法が編み出されたのだから苦労のしがいがありましたね。
先ず、撮影機材、カラーフィルムは高いし良好な発色にはそれなりの照明も必要、モノクロにすることでノワール調を出したかったと逆手にとれる。スタッフも専業ではないのでスケジュール調整が大変、その日、その時でロケ場所を決め脚本も変えるという離れ業、従って繋がり重視のシーケンス撮りは止めて時系列を壊している、これはミステリーには好都合の難解性を醸し出す・・。登場人物も絞った方が深みが増すしギャラも節約と脚本、監督、製作と一人何役もやったノーラン監督渾身のデビュー作。
個人的には、映画好きだから人間が嫌いではないのだろうが昨今は年のせいか人間関係の煩わしさが先にたつし、監督の頭の良さは認めるもののノーラン作品は策を弄しすぎで一回見ただけでは分かりにくいところがやはり難点かな・・。
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