「ノーラン監督渾身のデビュー作」フォロウィング odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ノーラン監督渾身のデビュー作
作家志望の青年ビルは尾行(フォロウィング)が日課。ネタ探しの人間観察で始めたとするが、一人一回限りとか女性を暗がりでつけないとか自身にルールを課すあたりがノーラン監督らしい。
ある日コッブという男に尾行を気付かれて腐れ縁が始まる。どちらも作家志望だとするが「尾行なんていかにも初心者、他人を知りたいならてっとり早く家を探るのが一番」とのたまうコップに引きこまれるビルでした。
人は覗きやストーカーまでは行かないものの、他人の私生活に関心がある筈と言う前提でのつかみと展開。コッブがやってることは空き巣だが金目のものは盗まない、「ガラクタも無くなって初めてその価値に気付くのさ」と屁理屈まがいの泥棒哲学まで語るから妙に納得させられるノーランマジック。
このまま引っ張るのかと思ったらブロンド女が絡んで二転三転、人は見たものを真実ととらえがち、裏にそんな謀略があったとは・・・。
人間の心の闇を描き続けるノーラン監督の長編デビュー作、特典の監督インタビューで知ったのだが、予算の無いことから様々な手法が編み出されたのだから苦労のしがいがありましたね。
先ず、撮影機材、カラーフィルムは高いし良好な発色にはそれなりの照明も必要、モノクロにすることでノワール調を出したかったと逆手にとれる。スタッフも専業ではないのでスケジュール調整が大変、その日、その時でロケ場所を決め脚本も変えるという離れ業、従って繋がり重視のシーケンス撮りは止めて時系列を壊している、これはミステリーには好都合の難解性を醸し出す・・。登場人物も絞った方が深みが増すしギャラも節約と脚本、監督、製作と一人何役もやったノーラン監督渾身のデビュー作。
個人的には、映画好きだから人間が嫌いではないのだろうが昨今は年のせいか人間関係の煩わしさが先にたつし、監督の頭の良さは認めるもののノーラン作品は策を弄しすぎで一回見ただけでは分かりにくいところがやはり難点かな・・。