「観客が映画に期待するものとは何か」ファニーゲーム おたけさんの映画レビュー(感想・評価)
観客が映画に期待するものとは何か
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みているとき隣に座っていた家族から「これ、胸糞映画で有名なやつだよ」と言われ、ビクビクしながら鑑賞する。
しかし、み終わって胸糞悪さは残らなかった。
映画が扱ってきた(扱い続けている)暴力や痛みを、弔うような映画だと感じた。
特に印象的だったシーンはふたつ。
女性が辱めを受けるシーンは、映画で本当によくあるが、この映画のカットこそまさに凌辱だった。
決まってよくある女性の裸は、画面にそれを映した時点で、彼女の苦しみではなく観客の官能と化す。
本映画では、まさにその期待をあえて煽り、観客に服を脱ぐ女体を想起させるが、そのようには描かない。
わが子が殺された部屋で放心する夫婦のシーン。
夫婦の顔のアップや涙など映さない。
カメラはずっと奥に引いて、喪失に茫然とする夫婦を延々と映す。
この夫婦にとってわが子を失うことは、エモーショナルな出来事でも、乗り越えるようなことでも無いのだと。
映画という構造に、観客が期待すること、求めること。
それに則ることで、暴力も凌辱も苦しみも、単なる刺激や官能に下る。
観客に「過激なものが見たいのでしょう?」「極限下の人情に感動したいのでしょう?」「命からがら救われるような、都合のいい奇跡を見たいのでしょう?」「あなたが映画へ持つ期待は何か?」と問うてくる。
映画を通じて人の痛みを描くとはどのようなことなのか、非常に丁寧に扱われた作品。
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