「一番怖いのは人間だ!」ファニーゲーム だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)
一番怖いのは人間だ!
私はホラー映画が好きですが、あまり怖いと感じることはないのです。理由はモンスターもゾンビも幽霊もそれは現実でない作り物だから。でも、映画で描くもので一番怖いものは、人間の恐ろしさです。それは現実でも起こりうる世界なのですから。
本作は余りにも理不尽な暴力を描いているため、観終わった後の憂鬱度はかなりなものに…。鑑賞中はずーっと苦痛なのです。ではなぜ観てしまうんでしょうか。それが自分でも分からない…。そうなんです、すでにハネケ監督のマジックにかかってしまっているんです。
オープニングでは、仲むつましい家族が車で曲当てゲームをしながら別荘に向かい、ほのぼのシーンから始まります。が、一転FUNNY GAMESというタイトルが出て、荒々しいロックの曲に変わり、冒頭から作品の異常感が伝わってくる。いきなり嫌な予感満載です…。
別荘で、ヨットの準備や料理を作って楽しい時間をすごしているさなか、一家は一方的に理由の無き、"殺人ゲーム"の標的とされます。12時間後に一家が死んでいるか、生きているかという理不尽な賭け。
あまりにも身勝手で残虐極まりない犯人達には、憎しみと吐き気しか覚えません。犯人の憎たらしい顔、馬鹿げた発言、卑怯なやり口、全てにおいて嫌気を覚えさせられます。
さらに犯人達は映画を鑑賞ている我々があたかも共犯者のように、話しかけてきます。
「おい、お前もこのゲームを楽しんでいるんだろう?」
と言わんばかりに・・・。
犯人は逃げだします。生き残ったのは夫婦二人、動から静へしばらく夫婦の精一杯の生への執念が静かに静かに繰り広げられるのです。父ゲオルクの足の骨が折れていても妻と二人で協力して歩く姿、必死で濡れた電話を乾かそうとする姿、希望を持ち外に出て助けを探す姿、残されたもののいたいけな頑張りが涙ぐましくも表現されています。
でも、監督は意地悪極まりない。よりによって助けを求めた車の運転手が犯人達だなんて。ひどい、ひどすぎる…。転々と転がるゴルフボール。そこには、希望はなく絶望しかなかった。
「ゲーム再開!!!」
・・・もう、書くのも嫌になる光景がラストまで続きます。
そして、なに?あのビデオテープ巻き戻し???ありえなさ過ぎるよ…。。。