「愛は障害を乗り越える?」我等の生涯の最良の年 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)
愛は障害を乗り越える?
ウィリアム・ワイラー監督の大傑作であると聞いていたので観てみた。今期大戦の3人の帰還兵が懐かしい故郷に戻って三者三様の道を歩む、というのが枠組みのようだ。空軍大尉でパリッとした軍服に身をつつむフレッド、中年の妻帯者で元銀行員のアル、両腕を失った傷痍軍人のホーマー。各人不安げに家族と再会するが、アル以外は無事帰還の喜びに本心から浸れないようだ。無節操で教養のないフレッドの妻は間男と出奔、両腕にフックを取りつけたホーマーはその家族と恋人に悲しみを与え、自らは引きこもりになる。アルは前の銀行に復職。フレッドは就活に追われる。やがてフレッドにアルの娘ペギーが恋心を寄せる。かような舞台設定で何を言わんとしているか、思うに、やはり真っ当な恋愛には多くの場合、障害物がはばかることだ。これは普遍的な現実だと思う。それを乗り越えて結ばれるまでの過程が俎上に乗ったときが物語として面白くなる。だから時代をさかのぼっても下っても重いテーマとして繰り返し扱われるのだ。その障害物として、たとえば身分の違い、貧富の差、病気など、挙げればきりがない。いつだったか「余命何ヶ月の花嫁」などという映画があった。アンドレ・モーロワは「美しいものはすべて自然でない」といった。だからこそ人々はこぞって鑑賞し涙するのである。この映画も定石通り、ホーマーは無事、結婚でき、
フレッドとペギーは永遠の愛の契りを交わすのである。
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